■SF第2戦岡山、参戦2年目の坪井翔が初勝利!
全日本スーパーフォーミュラ選手権の第2戦は岡山国際サーキットが舞台。秋晴れのレース日和に恵まれた一方、レースはスタート直前から波乱の展開を見せ、その中で予選8番手スタートの#39 坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)が巧みな戦略を味方にし、自身初となるスーパーフォーミュラでの勝利を涙で飾った。
有観客形式でシーズンを迎えたスーパーフォーミュラ。第2戦は、開催1週間前にフランスでのル・マン24時間レースに出場していた4選手が新型コロナウィルス感染防止対策を鑑みて欠場になったが、その代役として起用されたドライバーたちのアグレッシブなチャレンジにスポットライトが当たるレースウィークとなった。また、いまだ日本に入国できないままの外国人ドライバーに代わる出場を加えると、今大会にスポット参戦したドライバーは6選手に上った。
今回も開幕戦同様にレースは「1Day」のスケジュールで実施。ただし、前日には1時間x2回の走行セッションが設けられ、ドライバーはクルマのセットアップはもとより、ニュータイヤのフィーリング確認等、限られた時間の中で様々なメニューを消化している。
レース前日は走行セッション中に通り雨になるなど、やや不安定なコンディションだったが、レース当日は強い風が吹き続けるも青空がサーキット上空に広がる中でセッションが行われた。まず、午前中のノックアウト予選では、今回もQ1をA、B2組に分けて行い、全19台からQ2に向けて計14台を選抜した。Q1ではB組に出走した#36 宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)がトップタイムをマーク。中嶋一貴の代役ながら、初のSFで価値ある仕事ぶりを見せる。また、同様に山下健太の代わりを務めた#3 阪口晴南(KONDO RACING)もB組3番手のタイムを刻むなど、スーパーフォーミュラ・ライツのレギュラードライバーでもある若手ふたりが、トップフォーミュラでも速さをアピールした。なお、宮田は続くQ2でも14選手の中で最速ラップをマーク。逆にディフェンディングチャンピオンの#1 ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)は、今回もQ2で敗退。決勝は10番手からの追い上げを強いられた。最終アタックのQ3に入ると、ベテラン勢が躍進。中でも岡山を得意とする#20 平川 亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が1分12秒773の好タイムをマークし、2番手に0.336秒差をつけるパフォーマンスを披露した。一方、Q1、Q2と順調だった宮田も負けじとアタックし、2番手をもぎ取り、初のSFレースをフロントロウからスタートするビッグチャンスを手にしている。
午後3時15分の決勝スタート直前、ダミーグリッドからフォーメーションラップに入った全19台。なんと予選11番手と奮闘した阪口がアトウッドカーブでまさかのクラッシュ。路面温度が予想以上に低く、装着したタイヤを温めようとする中でクルマの挙動を乱してウォールにヒット、このまま惜しくもリタイヤとなった。また、レースはこの車両を回収するために一旦赤旗中断となり、当初51周での戦いは50周へと減算されてスタートを迎えた。
ところがハプニングはこれだけでは終わらない。仕切り直しのスタートでも、初のハンドクラッチシステムからのスタートに手間取ったのか、フロントロウの宮田が出遅れてしまい、その後方にいたTCS NAKAJIMA RACINGの#64 牧野任祐と#65 大湯都史樹が宮田をかわしてイン側から1コーナーへと進入。ところが、大湯がブレーキをロックさせ、前方の牧野、そしてそのアウト側にいた予選3番手の#4 サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)に接触。フェネストラズはグラベルへと飛ばされ、また牧野はコース中央でマシンを止める形となり、2台はともにここでレースを終えている。そして、大湯自身もフロントウィングを損失。その後、このアクシデントによりセーフティカーがコースインする中、緊急ピットインを行ってフロントノーズを交換したが、のちにドライブスルーペナルティを課せられた。
この時点でトップの平川に続いたのが、坪井。以下、予選6番手の#38 石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)、キャシディ、#5 山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、No.19 関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)となった。なお、今大会では、レース中のタイヤ交換が新たに義務付けられており、10周終了時点からピットインが可能になっている。これを受け、上位陣でいち早く動いたのが山本。10周終わりでピットイン。その翌周には坪井や関口らが続き、トップの平川は12周終わりで作業を行った。
このルーティンで優位に立ったのが、坪井。トップ平川より1周早いピットインでタイヤをしっかりと温め、コースに復帰したばかりの平川を背後から攻略。オーバーカットを成功させ、事実上のトップを奪取する。一方で”見た目”のトップは予選6番手だった坪井の僚友、#38 石浦宏明。結果敵に石浦はじめ、2番手キャシディ、3番手#18 国本雄資(carrozzeria Team KCMG)の3選手は、ピットインをレース後半に行う戦略を採ることになる。この中で先にピットインしたのは、石浦。好調に周回を重ねてきたが、タイヤグリップが低下し、ラップタイムも落ちてきたことから30周を終えてピットイン。コースに復帰した直後から事実上のトップである坪井と激しい攻防戦となり、ついには坪井の先行を許してしまった。だがその後、石浦も負けじと坪井を猛追。チームメイト同士のトップ争いを繰り広げていたが、いまだピットインせずにひたすらペースアップしていたキャシディの追い上げがわかるやいなや、キャシディの勝利を阻止する戦略へと転向。坪井、石浦の隊列で周回を重ね、48周終わりでピットインした”見えない敵”キャシディの追随を封じ込めることに成功した。結果、JMS P.MU/CERUMO・INGINGは、坪井と石浦によってチーム初となるワン・ツーフィニッシュを達成。初優勝の坪井に対し、石浦も2018年第5戦もてぎ以来となる表彰台に上がった。
(文:島村元子 撮影:中村佳史・北川正明)