シーズン後半戦に入った全日本スーパーフォーミュラ選手権。しかしながら、すでに暦は12月となり、例年とは大きく異なるスケジュールでの実施となる。さらに今回の鈴鹿大会は第5戦、第6戦を連日開催であり、タフな戦いになることが予測された。まず第5戦では、予選で鈴鹿のコースレコードを更新した#5 山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が大波乱の展開にも動じることなく完勝。今季待望の初勝利を果たし、タイトル争いでも優位に立つ結果を残している。
鈴鹿には、世界耐久選手権(WEC)と開催スケジュールが重複し、これまで2戦を欠場していた#7 小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)と#36 中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)が復帰。およそ2ヶ月ぶりの出走を果たした。また、Buzz Racing with B-Maxでは、前戦に続いて50号車を松下信治がドライブしている。また、寒さ対策と安全性の確保を考慮し、今大会からタイヤへの加熱が可能となり、各チームでは試行錯誤を凝らした”ウォーマー”が登場。ただし、F1で目にするようなタイヤ各個を包み込んで加熱する「タイヤウォーマー」の使用は禁止された。
今シーズンを通して採用されているA、B二組に分けて行うノックアウトQ1予選では、各自温めたタイヤのパフォーマンスをどのタイミングで使うのか注目が集まる。まず、山本が早くもコースレコードを更新し、A組トップで通過。B組も山本のチームメイトである#6 福住仁嶺がトップ通過を果たす。その一方、タイトル争いでトップにつける#20 平川 亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)は、出走前にミッショントラブルが発生。なんと、アタックチャンスを失い、午後からの決勝は最後尾からのスタートに甘んじた。Q2は、進出した14台の中からまたも山本がトップタイムをマーク。逆にランキング2位の#1 ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)はセッティングミスでまさかのQ2敗退となる。これにより、Q3進出を果たした8台はホンダエンジンユーザーが6台、残る2台がトヨタエンジンユーザーという結果となり、「冬はホンダエンジンが強い」というイメージを改めて印象づけた。その流れは最終アタックのQ3でも変わらず。山本が計測1周目に再度コースレコードを更新。さらにチェッカーラップのタイミングで、オートポリスのウィナー#16 野尻智紀(TEAM MUGEN)がこれを上回ってくる。だが、続いてアタックしていた山本が1分34秒533までタイムを縮めてトップを奪還。これにより、山本が自身通算12回目、今季初のポールポジションを手にした。
冬日和の恵まれた好天の中、気温16度、路面温度19度というコンディション下で決勝レースがスタート。午後1時15分に30周、180kmの戦いが幕を開け、まずフォーメーションラップが2周行われる。なお、これに先立って行われたウォームアップ走行で野尻がスローダウン。自力でグリッドに着けず、最後尾スタートとなる。さらに、フォーメーションラップで#19 関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)の車両にトラブルが発生。関口はグリッドに戻ることなくレースを断念する。なお、このハプニングを受け、さらにフォーメーションラップ2周が追加されることになり、レースは28周で行われた。
スタート直後、怒涛の追い上げを見せたのは、平川。4台をオーバーテイクし、タイトル争いに不可欠なポジション獲得を目指しての走りを続ける。ところが、オープニングラップで予選5位の#64 牧野任祐(TCS NAKAJIMA RACING)がチームメイトの#65 大湯都史樹と接触。ダンロップコーナーを直進し、クラッシュバリアに突っ込むアクシデントが発生する。これを受け、セーフティカー(SC)がコースイン。レースは幕開け早々から波乱の展開となった。リスタート後の順位は、トップ山本に次いで福住、3番手には可夢偉となる。レースは10周を過ぎると、ルーティンのタイヤ交換を始めるクルマが出始め、レース折返しを前に大半の車両が作業を済ませた。
トップ山本は18周終わりでピットイン。一方、10番手を走っていた松下が130Rでコースアウトし、クラッシュバリアに直進。これを受け、2度目のSCが導入された。すでにピットを離れてコースに復帰した山本は難なくトップをキープ。これに予選4番手の一貴が2位、同9番手の#18 国本雄資(carrozzeria Team KCMG)が3位で続き、レースは23周目にリスタートを迎える。だが、ここでも波乱が待っていた。激しく4位争いをしていた4台が絡むバトルの末、挙動が乱れた1台によって多重クラッシュが発生。#15 笹原右京(TEAM MUGEN)、平川の2台はその場で車両を止め、そして#39 坪井 翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)は緊急ピットインを強いられた。また、レースはこれを機に3度目のSCとなり、26周目終わりからリスタート。残り2周でのポジション争いとなったが、トップ3に動きはなくこのままチェッカー。山本がポール・トゥ・フィニッシュを決めた。結果、フルマークの23点を計上した山本は、シリーズランキング争いでも一気にトップへ浮上する好成績を残している。なお、2位の一貴、3位の国本にとっては、今季初の表彰台となっている。
(文:島村元子 写真提供 モビリティランド)