連日の決戦となった鈴鹿大会。第6戦も前日同様、荒れた展開の中で激しいバトルが繰り広げられた。その中でタイトル争い中の上位陣が次々とトラブルに見舞われる一方、オーバーテイクシステムを多用したポジション争いで明暗が分かれるなど、見どころの多い一戦でもあった。レースは自身最高位グリッドからスタートを切ったルーキーの#65 大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)が終盤の接戦を制してトップチェッカー。スーパーフォーミュラで自身初勝利を達成している。
前日とほぼ同じスケジュールで第6戦の予選がスタート。なお、第5戦決勝で単独クラッシュを喫した#50 松下信治(Buzz Racing with B-Max)、さらに多重クラッシュの中でクルマを大破させた#15 笹原右京(TEAM MUGEN)の2台は、マシン修復とともにエンジンを交換。結果、決勝スタート時には10グリッド降格のルールが適用される。また、第19回JAFグランプリとしての一戦でもある今大会において、決勝レースでのオーバーテイクシステムの使用時間について変更が加えられ、通常の100秒から倍となる200秒の使用が認められる。
第5戦では予選の出走を見送った#20 平川 亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)。この日はQ1・A組を2番手で通過。だがQ2でタイムを伸ばせず、14番手に終わった。一方、流れを味方にしたのが#1 ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)。前日の決勝は5位に留まっているだけに、その雪辱を果たしたいという思いが強かったはずだ。Q1・B組では7番手でギリギリの通過となったが、Q2でトップを奪うとその勢いでQ3もトップ通過。計算し尽くしたような鮮やかなアタックラップは1分34秒442という驚異的なもので、前日に#5 山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が更新したコースレコードをさらに上回る出来栄えだった。
この最速タイムに続いたのが、大湯。Q1・B組をトップ、さらにQ2はニックに次いで2番手のタイムをマークするなど好調さをアピールした。また3番手と自己ベストを手にしたのは笹原。前日のクラッシュによるエンジン置換で、決勝スタートは13番手となることが惜しまれた。
第6戦決勝は気温16度、路面温度24度と絶好のコンディションの下でスタート。今回は無事にフォーメーション2周からの決戦が幕を開け、トップのニックがホールショットを守る。一方、前日の覇者・山本は3番手グリッド(予選4番手)からのスタートだったが、背後からチームメイトの#6 福住仁嶺に逆転を許してしまった。そんな中、2周目のシケインで2台が絡むアクシデントが発生。うち1台がクラッシュパッドに突っ込み、このレース初めてのセーフティカー(SC)ランが始まる。レースがコントロールされる中、今度は5周目走行中の山本にトラブルが発生。スローダウンした状態でピットに戻るとすぐに修復作業が始まったが、ほどなくして出走を断念。まさかのノーポイントで戦列を去る。レースは7周目にリスタート。トップのキャシディは快調そのもの…に見えたが、8周を終えて1コーナーへと向かうクルマから突然白煙が上がると、そのまま1コーナー先でクルマをストップ。タイトル争いの渦中にいるひとりがまたしてもリタイヤに追い込まれる。すると、代わってトップに立った大湯が牽引する形となった9周目から2度目のSCが導入される。
10周を過ぎると、各車ルーティンワークのピットインを実施。トップの大湯はじめ、続々とピットに舞い戻り、タイヤを交換。2台がステイアウトを選択する。この2台は13周目のリスタート以降も激しいバトルを披露したが、19周目にS字でタイヤバーストを起こした車両を回収するために3度目のSC導入が決まると、ルーティンのピットインを消化。これを境にして事実上のトップが大湯に戻ってきた。大湯の背後につける福住との差は1秒強。時にベストラップを刻んで逃げる大湯と懸命に追う福住の差は周回ごとに縮まっていくが、逆転には至らず。結局、大湯がトップチェッカーを受けて、涙の自身初優勝を達成する。2位の福住に続いたのは、9番手スタートの#19 関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)。前日はフォーメーションラップ中にハプニングに見舞われ、スタートできず悔しい思いをしたが、ようやく第6戦で今シーズン初の表彰台に上がっている。
上位争いの中で、山本とキャシディがノーポイントに終わった第6戦。最終戦を前に、今大会で7位入賞を果たした平川がランキングトップの座に再びつくことになった。2位は平川と同ポイントの山本。3番手には野尻が続き、キャシディは4番手となった。今シーズンは全戦での獲得ポイントで競うのではなく、有効ポイント制が採用されており、上位最大5大会での獲得ポイントによってタイトルが決定する。とはいえ、最終戦の富士ではシンプルにポール・トゥ・ウィンを目指して全車がしのぎを削る戦いに挑んでくることだろう。
(文:島村元子 写真提供 モビリティランド)