SF第7戦富士、坪井がシーズン2勝目を達成! タイトルは山本の手に!

SF第7戦富士、坪井がシーズン2勝目を達成! タイトルは山本の手に!

2020年シーズン最後の戦いを迎えた富士大会。決戦当日は厳しい寒さながら冬晴れに恵まれ、激しい優勝争い、そしてシリーズチャンピオンを巡る壮絶な戦いが展開された。レースは予選2番手スタートの#39 坪井 翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)がスタートを決めると安定した速さ、スムーズなピット作業を味方にトップを快走。後続との緊迫した戦いを制し、トップでチェッカー。シーズンただひとり2勝目を挙げた。一方、タイトル争いでは、意地と意地がぶつかり合う気迫の攻防戦から#5 山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が権利を掴み取り、自身3度目のシリーズチャンピオンを獲得している。

スーパーフォーミュラとしては初の12月開催となった最終戦。前大会からわずか2週間というインターバルで迎えた最終決戦は、寒さとの戦いでもあった。前日に行われた専有走行とフリー走行では、気温が4〜6度、路面温度は2〜6度と極めて低く、タイヤへのプレヒーティングが認可されていなければ、走行は不可能に近いものであったのは言うまでもない。幸い、ワンデーレースの当日は午前10時前の時点で気温7度、路面温度10度と前日よりも上がったが、各チームともしっかりとタイヤへの加熱を行い、満を持してアタックへと挑むことになった。なお、最終戦を前に、TCS NAKAJIMA RACINGの#64 牧野任祐が髄膜炎を発症し、レースを欠場。代役として同チームでSUPER GTを戦う大津弘樹が急きょ招へいされている。

今回もQ1をA・Bの二組に区分して実施されたノックアウト予選。この時点でチャンピオンがかかる#20 平川 亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、山本のふたりは自力優勝での権利を持ち、残る#1 ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)と#16 野尻智紀(TEAM MUGEN)は条件次第ながら王者獲得の可能性があった。うち、キャシディはA組で4番手のタイムをマークしたが、そのタイムとセカンドタイムがトラックリミット違反の対象となり、タイムを抹消される。結果、キャシディは最下位からの決勝スタートが確定し、タイトル獲得に向けて黄信号が点灯した。なお、同じ組で出走した山本は3番手でQ2進出を決めている。続くQ1・B組のトップタイムは平川。寒い季節になってからはホンダエンジンユーザーが上位を占めることが多い中、平川が気を吐いてトップにつけた。

続くQ2でトップタイムをマークしたのは#50 松下信治(Buzz Racing with B-Max)。第4戦オートポリスから代役参戦する松下だが、存在感あるパフォーマンスを見せることになった。そして迎えたQ3。出走する8選手のうち4選手が早々にピットを離れてコンディションをチェック。一旦ピットへとクルマを戻し、タイミングを見計らってアタックラップへと向かった。逆に平川は残り時間5分半までピットで待機。それぞれ異なるタイミングでアタックを開始し、#15 笹原右京(TEAM MUGEN)がトップタイムをマーク。だが、その後、山本がこれを更新すると、続く野尻がチェッカー直前に1分19秒972という驚がくのタイムを叩き出す。その後、坪井が僅差の1分19秒989を刻んで2番手に。結局、山本は3番手に甘んじたが、この結果で貴重な1ポイントを加点。予選8番手と振るわなかった平川に1点差を付け、トップで決勝に挑むこととなった。

 

予選ポールポジション #16 野尻智紀(TEAM MUGEN)

予選ポールポジション #16 野尻智紀(TEAM MUGEN)

 

予選2番手 #39 坪井 翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)

予選2番手 #39 坪井 翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)

 

予選3番手 #5 山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)

予選3番手 #5 山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)

 

40周の戦いを目指し、午後1時40分に始まったスタート進行。ここで#19 関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が車両火災を起こしてコースサイドに停止したため、赤旗が提示される。セッション中断により、フォーメーションラップ開始が22分遅れ、午後2時47分に号砲となった。ところが、そのフォーメーションラップに向かう中、#12 タチアナ・カルデロン(ThreeBond Drago CORSE)がエンジンストール。自力でグリッドを離れることができず、ピットスタートを強いられる。さらに、コースでウォームアップしていた#51 シャルル・ミレッシ(Buzz Racing with B-Max)がスピン。エンジンストールの末にクルマを下りた。

 

スタート進行

スタート進行

 

結果、17台の車両によるスタートとなり、ホールショットを決めたのが坪井。一方、ポールの野尻は加速が鈍り、予選4番手の松下にも先行を許した。野尻の背後には山本、そして笹原が続き、予選8番手から平川は6番手までジャンプアップ。3周目に笹原を抜いて山本へと食らいつく。オーバーテイクシステム(OTS)を頻繁に活用して差を詰める平川。だが山本も巧みに応戦し、2台は僅差で周回を重ねていった。

 

スタート

スタート

 

シーズン中、セーフティカーランにピットインのタイミングに水を差されてせっかくの戦略が水泡に帰す展開が多かったせいか、最終戦もルーティンのピット作業は比較的早めのタイミングで消化するチームが多く見られることになった。今回、先陣を切ったのが3位走行中の野尻。アンダーカットを狙い、一目散にピットインした。ところが右フロントタイヤ交換時にホイールナットが転げ落ち、予期せぬタイムロスが生じる。その後、コース上で最速タイムをマークしながら懸命の追い上げを見せていた野尻だが、29周目のヘアピンで突然タイヤトラブルが発生。そのまま走行を断念し、戦いを終えている。

 

#16 野尻智紀(TEAM MUGEN)

#16 野尻智紀(TEAM MUGEN)

 

一方、平川は14周終わりでピットイン、これを意識したのか山本が翌15周終わりでピットイン。どちらもスムーズに作業を終えてコースに復帰、テール・トゥ・ノーズの激しい攻防を繰り広げる。抜きつ抜かれつの死闘で、平川が一旦前に出たものの、17周目には再びサイド・バイ・サイドとなり、山本が逆転。これを機に、2台の差が少しずつ離れていった。そんな直接対決とは別に、暫定トップを走るキャシディは依然としてステイアウトのまま周回を重ね、”見えない”ライバルたちとの差を詰めようと奮闘。毎周のようにベストラップを塗り替える気迫ある走りを披露した。ピットインは30周終了時。その直前に野尻がコースサイドにクルマを止めていたことを受け、ルーティンワークの消化を決断する。ピットに滑り込んだキャシディを、チームは7.8秒で送り出したが、すでに山本は1コーナー先へ。だがキャシディは諦めず、果敢に攻めの走りで山本を猛追。33周目のコカ・コーラコーナーで前に出る。一方、山本は、直接対決の平川の走りをターゲットに冷静なレース運びに徹していく。

レースは終盤を迎え、トップの坪井とこれを追う松下に大湯が割って入り、坪井は新たなライバルとなった大湯を意識してクルマをコントロール。レース中、使う機会が少なかったOTSを活用して逆転のチャンスを封じた。一方、大湯にはもうOTSが残っておらず、逆に背後の松下を警戒しながらのチェッカーとなった。そのトップ3台に最後の最後まで迫ったのがキャシディ。最終的にトップ坪井に対して3.882秒まで追い詰める力走を見せたが、優勝には届かず。とはいえ、気迫ある走りで日本での最後のレースを締めくくった。5位に山本が続いたことで、自身3度目となるタイトルを獲得。SUPER GTのタイトルと合わせ、自身2度目のダブルチャンピオンに輝いた。一方、平川は6位でレースを終了。SUPER GT同様、最終戦の戦いでまたも山本に逆転を許し、ランキング2位となっている。なお、スタートから盤石のレースで勝利した坪井は、2勝目の大量得点でランキングでも3位へとジャンプアップを果たすこととなった。

 

優勝 #39 坪井 翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)

優勝 #39 坪井 翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)

 

2位 #65 大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)

2位 #65 大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)

 

3位 #50 松下信治(Buzz Racing with B-Max)

3位 #50 松下信治(Buzz Racing with B-Max)

 

シリーズチャンピオン #5 山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)

シリーズチャンピオン #5 山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)

 

第7戦表彰式

第7戦表彰式

 

シリーズチームチャンピオン VANTELIN TEAM TOM’S

シリーズチームチャンピオン VANTELIN TEAM TOM’S

 

2020年シリーズ表彰式

2020年シリーズ表彰式

 

シリーズチャンピオン #5 山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)

シリーズチャンピオン #5 山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)

(文:島村元子 撮影:中村佳史)