4月24、25日、全日本スーパーフォーミュラ選手権第2戦が三重・鈴鹿サーキットで開催され、快晴の下で予選、決勝を各日繰り広げた。その中で、予選2位からスタートした#16 野尻智紀(TEAM MUGEN)が安定感ある走りで2連勝を飾っている。
開幕戦は全18台による開催だったが、今大会からB-MAX RACING TEAMが参戦。50号車のイヴ・バルタスは未だ来日が果たせず出場を見送っているが、一方でホンダから日産系のチームに移籍し、SUPER GTを戦っている松下信治が2018年ぶりにスーパーフォーミュラへと復活を果たすことになり、19台が出走した。なお、開幕戦に続き欠場したのは、病気療養中のDOCOMO TEAM DANDELION RACINGの牧野任祐(代役は笹原右京)、WEC(世界耐久シリーズ)に出場するKCMGの小林可夢偉(同・小高一斗)、そしてドバイで足止め中のKONDO RACINGのサッシャ・フェネストラズ(同・中山雄一)の3選手。また、可夢偉同様、WEC参戦のKuo VANTELIN TEAM TOM’Sの中嶋一貴も欠場となり、今シーズンからスーパーフォーミュラ・ライツにフル参戦中のジュリアーノ・アレジが大役を担うことになった。
今シーズン、レース活動の主軸を日本へと移したアレジ。SUPER GTのGT300クラス(現時点ではスポット参戦)とスーパーフォーミュラ・ライツに参戦中だ。F1ドライバーとして日本でも高い人気を誇ったジャン・アレジを父に、そして女優の後藤久美子を母に持つ”セレブ”なジュリアーノは、これまで欧州のフォーミュラレースでキャリアを積み、当然のことながらF1GPへのステップアップを夢見たが、群雄割拠の激しい競争から一旦距離を置いて日本でのレース参戦を選択。”ファーイースト”での躍進を目指すようだ。
予選日は朝から薄曇りの一日となったが、気温、路面温度ともにほぼ安定したコンディションとなる。一方で、今大会はオートバイレースとの併催”2&4”イベントのため、普段のレースとはまた異なる路面状況を考慮してアプローチすることがドライバーには求められることになった。午後3時10分にスタートしたノックアウト予選。A。Bの二組に分けられアタックを開始。9台が出走したA組では#20 平川 亮(carenex TEAM IMPUL)が、そして10台出走のB組は#5 福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がトップタイムをマークする。
続くQ2には14台によるアタック。上位8台がQ3へと駒を進めることができる。与えられた7分間のうち、残り5分を切ってから大半のクルマがコースへと向かったが、鈴鹿を得意とする#1 山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)は計測1周でのアタックを敢行。しかし思うようにタイムを伸ばせず、上位8台に残ることはできなかった。
ラストアタックとなるQ3。ルーキーとしてはアレジ、宮田が進出を果たし、大器の片鱗を示す。Q2同様、7分間のセッションで真っ先にコースインしたのは開幕戦ウィナーの#16 野尻智紀(TEAM MUGEN)。アウトーインでピットに戻り、リヤタイヤ2本を交換、再びコースへと向かいアタックに入ると1分36秒645のトップタイムをマークする。その直後、チェッカーフラッグが出ると、福住が1分36秒449でトップを奪取。また、後方でチェッカーを受けるドライバーも次々と自己ベストラップをマークした。だが、福住、野尻のタイムを上回るドライバーは現れることはなく、全セッションでトップタイムを刻んだ福住がスーパーフォーミュラで初めてのポールポジションを手にしている。2番手の野尻に続いたのは、#64 大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)。ポジションこそ違えど、期せずして開幕戦の決勝トップ3が今大会の予選トップ3でも顔を揃える結果となった。
迎えた決勝日。前日よりやや冷たく強い追い風がメインストレートに吹く中、午後2時30分に30周のバトルが幕を開ける。クリアスタートを決めたポールの福住ともうひとりのフロントロウ——野尻に対し、予選3番手の大湯がエンジンストールを喫し、中団に飲み込まれてポジションダウンする。トップ福住はただ一人1分40秒の速いペースで早速に野尻を引き離しにかかり、8周目には2台の差が3秒へと広がった。ところが翌周の西コースを快走する福住にアクシデントが降りかかる。スプーンカーブで白煙を上げると、西コースのバックストレートで右リアタイヤがまさかのバースト。ペースを落としながら走行するも、130Rでサスペンションへとダメージが及んでしまう。なんとか自力でピットに戻ったものの、そのまま戦列を離れることになった。これにより、トップが転がり込んだ野尻は、2番手にいた平川を意識しながらのレース運びを見せていく。
レースは10周目をすぎるとピットインが可能となることから、ミニマムでの周回数でタイヤ交換を行うドライバーが続々とピットイン。10周終わりで8台、さらに翌周には3台と半数以上が作業を済ませる。一方、トップの2台は3秒前後の差で快走を続けており、開幕戦同様、終盤でのピット作業がキモになるかと思われた。だがしかし、12周を過ぎると平川のピット前ではタイヤの準備が始まり、これを見た野尻のチームが同一周回での作業をすべく、13周を終えたところで野尻をピットに呼び寄せた。これと同じタイミングで5番手を走行中だった大湯がピットイン。ところが肝心の平川はステイアウトを選択、14周終わりでピットに帰還した。共に相手を意識したピットイン、さらにはコースに復帰してからのプッシュも気迫あふれるものだった。なかでも、野尻はオーバーテイクシステムを使ってさらにスピードアップ。まだ十分に温まっていないタイヤでの走りに、コーナーではひやりとするオーバーランとなったがなんとかこらえてトップをキープし、平川の出鼻をくじいた。
そんな攻防戦に次なるハプニングが襲いかかったのが16周目。130Rを走行中の1台がタイヤをバーストさせてオーバーラン、そのままスポンジバリアにヒットして車体が裏返るアクシデントが発生する。ドライバーは自力でクルマを降りたが、これにより、セーフティカーが導入されてレースはコントロール下に置かれることとなった。一方、この時点でピットインを伸ばしていた車両もピットへと戻ってルーティン作業を消化。19周終了をもって再びレースが幕を開ける。
残り11周となったスプリントレースでは、各車手持ちのオーバーテイクシステム(OTS)を多用し、丁々発止の攻防を展開。だが、逃げる野尻に対し、平川はすでにOTSの残量も心許なく、切り札には使えない状態となっていた。それでも平川はじりじりと野尻との差を詰めて最後まで粘ったが、これに動じることなくミスなくそつなくレースをまとめ上げた野尻が2連勝を達成。ポイントでもライバルとの差をしっかりと広げることに成功した。2位平川は今季初表彰台を獲得。また、3位に続いた笹原はスーパーフォーミュラでの自身初表彰台を手にしている。
第3戦は舞台を九州・オートポリスへと移しての一戦。予選、決勝を通してホンダエンジンユーザーが速さを見せつける展開が続いているが、果たしてオートポリスではトヨタエンジンユーザーが挽回してくるのか、見どころ多い戦いとなりそうだ。
(文:島村元子 写真提供 モビリティランド)