<GT500>
試合巧者の王者、STANLEY NSX-GTが激戦を制す!
梅雨明け直後に開催されたSUPER GT第4戦もてぎ。舞台の栃木・ツインリンクもてぎは早速厳しい暑さに見舞われ、タフな戦いを強いられた。レースはポールポジションスタートの#1 STANLEY NSX-GT(山本 尚貴/牧野 任祐)と予選2番手の#19 WedsSport ADVAN GR Supra(国本 雄資/宮田 莉朋)が終盤まで攻防戦を展開したが、ディフェンディングチャンピオンである1号車が試合巧者ぶりを発揮、待望の今シーズン初優勝を果たしている。
5月末に開催予定だった第3戦鈴鹿大会が、新型コロナウイルス感染再拡大の影響で8月下旬に延期されたSUPER GT。一足先に第4戦を実施するというイレギュラーな形となったが、サーキットにはレース開催を待ちわびた多くのファンが訪れ、真夏の”熱い”戦いをしかと見届けていた。
予選で快走を見せたのは、1号車。Q1担当の牧野がトップタイムをマークすると、その勢いのままQ2でも山本が最速ラップを叩き出す。参戦12年目の山本にとっては、地元のもてぎで初めて手にするポールポジションとなった。
決勝では、初優勝を目標に好スタートを切った1号車。その背後を予選2番手の19号車がピタリとマークし、タイヤコンディションが向上すると7周目の5コーナーで勝負に出てS字手前で1号車逆転に成功する。その後はぐんぐん後続を引き離す力走で、一時は5秒ものマージンを築いてレースを牽引した。この展開を打破しようと、1号車はライバルに先んじて24周終わりにピットイン。40.1秒の速やかな作業でコース復帰を果たす。一方、19号車は他車のピットインがやや落ち着いたタイミングとなる28周終わりでピットへ。満を持して作業に取り掛かったスタッフだが、右フロントタイヤ交換で思わぬロスタイムが生じる。結果、45秒の時間を要し、クルマがピットロード出口を出た瞬間に1号車がメインストレートを駆け抜け1コーナーへ。鮮やかな逆転劇を見せつけた。
トップ奪還に成功した1号車だったが、追う19号車も諦めない。4秒近くの差をじわりじわりと縮めて再び攻防戦へと持ち込んでいく。だが、前を走る1号車山本は、後方から迫る19号車宮田をコントロールするかのような走りで巧みに”マネージメント”。加えて、41周目と45周目には、トラブルでコースサイドに停止した車両処理のためFCY(フルコースイエロー)が導入されたことで、タイヤ温存の好機に恵まれる。これにより、チェッカーが近づく中で再度19号車が1号車に迫ったが、1号車は逆転の決定打を与えることなくそのまま逃げ切りに成功。ようやく今シーズン初優勝を果たすこととなった。2位19号車も今季初表彰台を獲得。3位には予選4番手からレース序盤にポジションを上げ、安定した速さを見せた#36 au TOM’S GR Supra(関口 雄飛/坪井 翔)が続いている。
<GT300>
FCYで明暗。muta Racing Lotus MCが初優勝
FCYを味方につけて勝利したのは、GT300クラスでも同じだった。予選Q1B組。0.049秒という僅差でQ2進出を逃した#2 muta Racing Lotus MC(加藤 寛規/阪口 良平)だったが、持ち前のスピードを武器に予選クラス17番手から確実にポジションアップ、20周目にトップ10入りを果たす。ちょうどこの辺りからルーティンのピットインを行うチームが次々と出始め、よりクリアになったコースで2号車はクラストップに立ち、さらにペースアップして周回を重ねていった。レースは37周目にGT300の1台が失火、130R付近でクルマを止める。このアクシデントを受け、2号車はピットインを敢行。しかもタイヤ無交換の勝負に打って出た。するとその間にFCYが発動され、コース上の車両は追い抜き禁止とともに時速80キロ制限が強いらる。これを追い風とした2号車はトップのままコース復帰、レース終盤へと向かっていった。
一方、予選クラスポールからのスタートを切った#11 GAINER TANAX GT-R(平中 克幸/安田 裕信)。序盤からトップをキープ、盤石なレース運びを見せていたものの、思いも寄らぬ形で2番手となる。2度目のFCYでトップとの差を縮めることには成功したが、その一方で、予選2位の#244 たかのこの湯 GR Supra GT(三宅 淳詞/堤 優威)をかわして3番手まで浮上した#52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田 広樹/川合 孝汰)に詰め寄られ、最終的にはポジション死守が精一杯だった。結果、2号車が逃げ切りチェッカー。加藤と阪口のベテランコンビによる初勝利を達成している。
(文:島村元子 写真提供 GTA)