スーパーフォーミュラ 第6戦 もてぎ レポート

スーパーフォーミュラ 第6戦 もてぎ レポート

SF第6戦もてぎ、ポールスタートの大津が自身初勝利を飾り、野尻がチャンピオンを獲得

10月16、17日、栃木・ツインリンクもてぎで全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦が行われ、自身初ポールポジションからスタートを切った#15 大津弘樹(Red Bull MUGEN Team Goh)が荒れた展開の中で安定感ある走りを披露。見事自身初優勝を飾った。また、ポイントリーダーの#16 野尻智紀(TEAM MUGEN)は、タイトル争いをするライバルの脱落もあり、5位フィニッシュながら今シーズンのチャンピオンを獲得。自身初の戴冠となった。

10月に入ってなお夏日を記録するなど、秋を感じることが少なかった日本列島。しかしもてぎでのレースウィークを前にめっきり朝晩の気温が下がり、一気に秋めいてきた。そんな中で迎えたスーパーフォーミュラも今シーズン残り2戦となり、ここもてぎは前回からの連戦となる。特徴あるコースレイアウトに準じたセットアップは直近のデータを活かせるが、その反面、大きく気候やコンディションが変わっていることから新たな調整を加えての挑戦となった。

なお、今大会の参加台数はこれまで同様19台だが、そのラインナップに大きく変わった。まず、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から入国許可が下りず、長らく来日できなかった#4 サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)の参戦がようやく実現。また、世界耐久レース(WEC)参戦組の#7 小林可夢偉(KCMG)、#36 中嶋一貴(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)、#12 タチアナ・カルデロンも復帰。レギュラーメンバーによる熱戦に期待が集まった。

予選を迎えたもてぎは朝から曇天模様。気温20度、路面温度24度、さらに時折霧雨が降る不安定なコンディションの中で、朝のフリー走行、午後の予選が行われた。フリー走行でトップタイムを刻んだのは、#5 福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。一方、最終戦を待たずして自力優勝に王手をかける野尻は3番手につけ、好調をアピールした。

迎えたノックアウト予選は、Q1・A組に出走した小林がまさかのスピン&クラッシュで赤旗中断を招くという波乱でスタート。さらに、Q1・B組の途中から弱い霧雨が降り始める。スリックのままアタックするか、ウェットタイヤへ交換すべきか…その見極めが極めて困難となる微妙なコンディションへと変わる中、結果的にウェット宣言が出たのは、Q2・A組の開始約3分後。この時点で、アタック中の2台(#3 山下健太、#64 大湯都史樹)が即座にタイヤ交換を敢行して好タイムをマークしたが、その判断がやや遅れた#20 平川 亮(carenex TEAM IMPUL)は、交換直後のウェットタイヤでアタックが叶わず、Q2敗退。残されていたタイトル獲得のチャンスが消滅した。続くQ2・B組になると、開始時点からウェットタイヤを装着してコースインするクルマが出てくる。他車もアウトラップだけでピットイン、ウェットへ交換してアタックを始めた。結果として、2台がスリックタイヤでステイアウトしたが、コンディションが回復することはなく、タイムを伸ばせずに終わっている。

最終アタックのQ3に8台が挑む頃、霧雨も止んで上空が明るくなってはいたが、出走時からウェットタイヤで出走したのが7台。大津だけがスリックでアタックに挑んだ。回復する路面を味方に大津はペースアップを果たし、残り時間2分の時点でウェットタイヤ組に大きな差をつける1分33秒463でトップに立つ。一方、コース上はウェットでのアタックが次第に厳しい状況となり、ピットインして再度新しいウェットを投入してアタックするドライバーもいるほど。だが、大津はさらにタイムを1分32秒317まで縮めてライバルの追随を許さず。結果、自身初のスーパーフォーミュラでのポールポジションを獲得することとなった。また、#1 山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)がこれに続き、3番手には野尻。最後の最後でタイムアップを果たし、タイトル実現に向けて貴重な1ポイントを加算する意地の走りを見せた。

 

予選ポールポジション #15 大津弘樹(Red Bull MUGEN Team Goh)

予選ポールポジション #15 大津弘樹(Red Bull MUGEN Team Goh)

 

予選2番手 #1 山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)

予選2番手 #1 山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)

 

予選3番手 #16 野尻智紀(TEAM MUGEN)

予選3番手 #16 野尻智紀(TEAM MUGEN)

 

決勝日は朝から雨模様。前夜から雨が続き、冷たい風を伴って寒さを覚えるほど。そんな中、サポートレースを経て、午前10時50分から30分間のフリー走行2回目が行われた。本降りの中で行われたセッションでは、コースアウトするクルマが続出。開始10分、さらに終盤残り8分の時点でそれぞれ赤旗に中断もあり、落ち着かなかったが、その中でトップタイムをマークしたのはフェネストラズ。序盤に僚友の山下が出したタイムを上回り、KONDO RACINGのふたりがトップ2を独占した。

 

スタート

スタート

 

その後、次第に天候が回復。決勝中、降雨の可能性は軽減されたが気温も低く、冷たい風が吹いており、スタートはまだ路面がしっかりと濡れた状態のため、全車がウェットタイヤでスターティンググリッドを離れた。35周の戦いがスタートするや、ポールの大津がホイルスピンを起こしてやや出遅れ、きっちりスタートを決めた2番手の山本と1コーナーでサイド・バイ・サイドに。だが、大津はオーバーテイクシステム(OTS)を使い、これを防戦してトップを死守する。3番手の野尻はスタートを決めたものの、4番手山下を抜いて迫ってきた#39 阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)との攻防に。さらに5コーナーでこの隙を突いた山下が3番手を奪った。だが、野尻への応戦はさらに続き、背後から大きくスタートでポジションを上げた#51 松下信治(B-MAX RACING TEAM)、#19 関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)らが迫り、結果として先行を許してしまう。激しくポジションが入れ替わったオープニングラップ以降も、野尻は思うようにペースアップできず、8番手で周回を重ねていくことになった。

一方、トップ大津に対し、山本も果敢に攻め立て逆転のチャンスを伺う。そんな中、3位山下のペースが落ち始め、ズルズルとポジションダウン。すでにウェットタイヤでの走行継続が難しいと判断し、9周終了でピットへと戻りスリックタイヤへと交換した。また、このタイミングで僚友のフェネストラズもピットイン。タイヤ交換を済ませてコースに復帰する。だが、そのアウトラップでフェネストラズがスピン。5コーナーでコースアウトし、リヤタイヤが空転して動けなくなってしまった。それを見てコースにはセーフティカー(SC)が導入。すると、トップの大津はじめ、全9台が次々とピットイン。スリックタイヤへの交換が始まる。レースは13周終了時点で再開、このタイミングで山本、福住、平川の3選手がステイアウトを選択したが、レース再開後に福住はピットイン。ところが左リヤタイヤがうまく装着せず、大幅なタイムロスが生じた。また、山本と平川は16周終了時にピットイン。大半の車両がすでに作業を終えていたため、上位復帰が厳しくなってしまう。

レースは17周目の2コーナーでカルデロンがクラッシュ、2度目のSC導入に。21周目にはリスタートとなったが、このとき、周回遅れの1台が走行ラインを譲る中で混乱が生じたか、複数台の車両によるクラッシュが発生。3コーナー先で#38 坪井 翔(P.MU/CERUMO・INGING)、そして山本と平川の3台がクルマを止め、レースを終えている。また、このアクシデントによってレースは3度目のSCランとなり、25周目に再びリスタートを迎えた。

終盤へと向かう中、3位へ浮上していた#6 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が2位の阪口を攻め立てる中、逆に背後に迫った関口に逆転を許してしまう。一方、阪口はトップ大津をロックオン。OTSを作動して幾度となく仕掛けたが、大津はひるむことなくシャットアウトしてトップをキープし、さらに立て続けにファステストラップを叩き出す速さを見せて、後続を引き離しにかかった。大詰めの中で強さを見せた大津に対し、2位以下はそれぞれのポジション死守に気を取られる状態。中でも3位の関口は、チェッカーまで残り2周となった時点で牧野に詰め寄られ、ともにOTSを使っての攻防戦となる。だが、関口は最終コーナーで挙動を乱し、翌周の3コーナーで牧野に逆転される。結果、2位に阪口が続き、3位には牧野。関口は3戦連続の表彰台を逃して4位でチェッカーを受けている。そして今回、厳しい戦いをかいくぐり、5位チェッカーを受けた野尻。ライバルの脱落もあって、このもてぎ戦で今シーズンのタイトル獲得を決めることに成功。スーパーフォーミュラへの参戦8年目にして、悲願のチャンピオンを掴んでいる。

 

優勝 #15 大津弘樹(Red Bull MUGEN Team Goh)

優勝 #15 大津弘樹(Red Bull MUGEN Team Goh)

 

2位 #39 阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)

2位 #39 阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)

 

3位 #6 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)

3位 #6 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)

 

シリーズチャンピオン #16 野尻智紀(TEAM MUGEN)

シリーズチャンピオン #16 野尻智紀(TEAM MUGEN)

 

決勝正式結果

(文:島村元子 写真提供 モビリティランド)