<GT500>
ARTA NSX-GT、劇的逆転で2連勝を飾る
11月7日、栃木・ツインリンクもてぎにおいてSUPER GT第7戦の決勝レースが開催され、予選3番手から鮮やかな逆転劇を披露した# 8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺)が前回のオートポリスに次ぐ連勝を果たした。
レースウィーク中、小春日和に恵まれたもてぎ。まず予選で最速タイムをマークしたのは#19 WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/宮田莉朋)。そして#24 リアライズコーポレーション ADVAN GT-R(高星明誠/佐々木大樹)が2番手につけ、ヨコハマタイヤ勢によるフロントロウ独占が実現。19号車にとっては今シーズン2度目のポールスタートに初優勝の夢が膨らんだ。
63周にわたる戦いの火蓋が切って落とされると、19号車がホールショットを決めると、その後方でスタートダッシュを決めた8号車が1コーナーで2番手を奪ったが、その8号車をも上回ったのが、予選4番手の#12 カルソニックIMPUL GT-R(平峰一貴/松下信治)。まさにロケットスタートで3コーナー進入時には8号車をパスし、2位へと躍り出た。逆に2番手スタートの#24 リアライズコーポレーション ADVAN GT-R(高星明誠/佐々木大樹)は、タイヤのウォームアップに苦戦し、5番手までポジションを落としていた。
レースは序盤からFCY(フルコースイエロー)が発動する慌ただしい展開。このため各車僅差の状態が続き、緊迫した攻防戦を繰り広げることになった。トップ争いが動いたのは2回目のFCY解除明けのこと。21周目にブレーキング競争を制した12号車が逆転を果たし、トップへ。そのまま23周終わりにピットインし、ルーティン作業に入った。これに後ろの5台が続き、それから数周のうちに大半の車両が作業を済ませてコースに復帰する。対する19号車は24周終わりにピットへ帰還したが、コース復帰後は12号車、さらには8号車にも先行されてしまった。終盤に向かう中、トップ12号車と8号車の差がじわりじわりと縮まり、3秒から2秒…1秒となり、ついに残り5周の時点で0.365秒まで大接近。スーパーフォーミュラで悲願の自身初タイトルを手にした8号車野尻に対して12号車平峰が一歩も引かず、手に汗握るドッグファイトを両者が繰り広げた。そして迎えたファイナルラップ。なんと1コーナーへと向かう12号車のペースが急激に落ち、8号車は労せずしてトップを奪取。まさに筋書きのないドラマの主人公として、2連勝を達成した。12号車はガス欠の影響か、ときにクルマを揺すりながら走行を続けフィニッシュラインを目指したが、その寸前に19号車の逆転を許し、3位で戦いを終えている。
一方、タイトル争いでトップの# 1 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐)はシーズン初ノーポイントの12位。8号車が今回の優勝によって5点差でランキング2位へと浮上し、さらに、#17 Astemo NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット)がトップと8点差、8号車とは3点差の3位で追う形となった。最終戦の富士ではホンダ勢3台によるタイトル争いがヒートアップすることになるが、全車がウェイトを下ろしての”ガチバトル”となることから、チャンピオン争いとは別に、最終戦での優勝をもくろむライバルも多い。当然のことながら、激しい戦いが繰り広げられることだろう。
<GT300>
Hitotsuyama Audi R8 LMSが戦略を味方にシーズン初優勝!
#18 UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/名取鉄平)がうれしい初ポールポジションでスタートを切るも、僅か6周目に車両トラブルが発生、戦列を去る。代わってトップに立ったのは予選2番手の#61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)。サクセスウェイトではダントツの75㎏を搭載するも、トップをひた走る。しかし、2度に渡るFCY発動に後続とのマージンが構築できず、流れを味方につけられない。逆に背後の#55 ARTA NSX GT3(高木真一/佐藤 蓮)が61号車に迫り、13周目に逆転。その後は、トップ55号車に61号車、さらに#88 JLOC ランボルギーニ GT3(小暮卓史/元嶋佑弥)が迫る形で周回を重ねていった。31周終わりでトップ55号車がピットイン。その翌周には61号車、さらにじわりじわりとポジションを上げていた#56 リアライズ 日産自動車大学校 GT-R(藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)がピットイン。4輪交換の61号車に対し、56号車は無交換の強行に打って出ることでポジションアップを狙った。39周終わりで全車が作業を終えると、なんとこのタイミングでトップに立ったのは#21 Hitotsuyama Audi R8 LMS(川端伸太朗/篠原拓朗)。リヤタイヤ2本交換が奏功し、事実上トップの55号車をも逆転。以後、快走を続けてそのままチェッカー。コンビ初となる勝利を飾った。2位には55号車、そして3位はタイヤ無交換の56号車が続いている。
(文:島村元子 写真提供 GTA)