SF第3戦鈴鹿、松下信治が大逆転勝利!
4月23、24日に三重・鈴鹿サーキットで開催された全日本スーパーフォーミュラ選手権第3戦。レースは予選9番手から大きくポジションを上げて終盤に大逆転を果たした#50 松下信治(B-MAX Racing Team)が優勝。待望の自身初勝利を飾った。ポールポジションからスタートした#1 野尻智紀(TEAM MUGEN)が2位、#5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が3位に続き、今季初表彰台に立った。
開幕大会からわずか2週間という短いインターバルで迎えた鈴鹿戦。今回は恒例の”2&4レース”とあり、2輪、4輪問わずモータースポーツファンがサーキットに足を運んだ。また、舞台となる鈴鹿は今年で開場60周年を迎えており、現地ではさまざまなイベントが行われた。一方、前回の富士大会は予選と決勝を1日で行うタイトなスケジュールで2戦を消化したが、今回は、土曜日に予選、日曜日に決勝を行う通常のフォーマットで開催されている。
予選日は薄曇りながらドライコンディション。朝のフリー走行から好調だった野尻が、午後からのノックアウト予選でも引き続き圧倒的な走りを見せつけた。気温24度、路面温度31度のコンディションの中、A、Bの2グループに分けて実施されたQ1ではAグループで#4 サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)がトップタイムをマーク、Bグループでは野尻がトップにつける。一方、前回の富士では予選で躍進した 野尻のチームメイトである#15 笹原右京(TEAM MUGEN)は、前方車両に走行を阻まれる形となり、2コーナーで大きくはらんでしまう。限られたチャンスでアタックするも、Q2進出を絶たれてしまった。
最終のQ2は午後3時45分にスタート。今シーズンから予選フォーマットが変更され、Q2までのノックアウト方式となっており、このQ2にはQ1の各グループから上位6台、計12台が出走し、7分間でポールポジションの座をかけて争う。セッション開始早々にピットを離れた野尻はアウトラップのみでピットイン。セットアップがうまくいったことを確認をすると、満を持したタイミングでアタックに向かう。チェッカーまで残り1分の時点でまず自らがアタックラップを済ませ、1分36秒352という圧巻のタイムを叩き出した。この時点で、Q2開始後からピットで待機していた他車もアタックの真っ只中。野尻を追うように続々とチェッカーを受けたが、野尻のタイムには及ばず。Q2に出走した12台のうち、最後にチェッカーを受けた#3 山下健太(KONDO RACING)が1分36秒427までタイムアップしたものの、野尻を上回ることはなかった。野尻にとっては自身通算9回目のポールポジション獲得。加えて今回は自身初の鈴鹿サーキットでのポールという”おまけ”付きだった。2位山下に続いたのは、山下のチームメイトであるフェネストラズ。KONDO RACINGは開幕戦から上位で結果を残しており、今シーズンの躍進に注目が集まる。なお、予選後、決勝のグリッドに関しての変更があり、Q1で笹原への妨害行為の判定が下された#18 国本雄資(KCMG)が3グリッド降格の対象に。Q2で5番手につけたが、決勝は8番手スタートとなった。
翌日の決勝日は朝から雨模様。フリー走行、ウォームアップと雨が続き、31周の決戦も完全なフルウェットでの一戦になった。ポールスタートの野尻がホールショットを奪い、オープニングラップから2位以下を引き離す。逆に予選2番手の山下は序盤からペースが上がらず苦戦。11周目には予定外のピットインでタイヤ交換を強いられ、ポジションを大きく下げた。一方で、牧野は予選5番手から3番手に、また松下も予選9番手からあれよあれよとポジションアップを果たし、レース中盤を迎える。
逃げるトップの野尻は後続に一時は11秒の差をつけて独走。一方、牧野、松下の差が徐々につまり、激しい攻防戦を展開する。また、コース上も雨量によってクルマのコントロールが難しく、それがラップタイムに反映されるというタフなコンディションになっていた。そんな中、レースは折返しを過ぎて松下が牧野に急接近。序盤はタイヤを労りながら周回することに徹していたが、次第にペースを上げて牧野攻略を開始する。2台はテール・トゥ・ノーズを経て、27周目のシケイン飛び込みでは松下がレイトブレーキングを決め、逆転に成功。これで前が空き、さらにペースアップしてトップの野尻に迫っていく。周回ごとに着実に野尻との差を詰めた松下は、29周目のスプーン立ち上がりで背後に迫ると、30周目の1コーナーではアウト側のラインを取り、一気に野尻を攻略。野尻はOTS(オーバーテイクシステム)が残ってはいたが、すでにタイヤがグレーニングを起こしており、追い上げる力はなかったとレース後の会見で振り返った。
ファイナルラップまで残り1周の時点でトップに立った松下。あっという間に野尻との差を広げ、最後は5秒強という申し分のないギャップを保ってチェッカー。念願の自身初優勝を果たすことになった。また、この勝利はチームにとっても初めての一勝となる。2位野尻は優勝目前にして松下に逆転を許すという悔しい結果となったが、予選でのポールポジションと決勝2位のポイント獲得でシリーズランキングではライバルを引き離している。
4月中に2大会3レースを終えたスーパーフォーミュラ。次の戦いは九州・オートポリスとなる。ベテランはもちろん、若手、そしてルーキ−ドライバーの躍進も目立つ今シーズンは見どころある展開も多く、トップ争いに限らずあちこちでポジション争いを展開している。次戦はどのようなバトルが繰り広げられるのか、楽しみは尽きない。
(文:島村元子 写真提供:ホンダモビリティランド)