SF第4戦オートポリス、平川亮が大逆転勝利!
5月21、22日、大分・オートポリスにおいて全日本スーパーフォーミュラ選手権第4戦が開催された。予選は#1 野尻智紀(TEAM MUGEN)が今シーズン3連続ポールポジションを手にしたが、決勝は序盤から荒れ模様の展開となり、その中で予選8番手スタートだった#20 平川 亮(carenex TEAM IMPUL)が戦略を味方に逆転勝利。今シーズン2勝目を挙げている。
初夏の爽やかな天候に恵まれたオートポリス戦。予選日にあたる初日は早朝に小雨が降り、午前のフリー走行時にはウェット宣言が出されるウェットコンディションにもなったが、すぐさま天候も回復してほぼドライコンディションでクルマのセットアップを進めていくことになった。朝のフリー走行では開始1時間を前に、#65 大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)がジェットコースターストレートで挙動を乱し、コースアウト。クルマにダメージを負い、さらにセッションも赤旗中断になってしまった。なお、大湯は午後からの予選には出走は叶ったものの、エンジン置換を行ったことで決勝は10グリッド降格によるスタートを迎えることに。なお、このフリー走行でトップタイムをマークしたのは#4 サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)。これに#38 坪井 翔(P.MU/CERUMO・INGING)、#1 野尻智紀(TEAM MUGEN)が続いた。
午後に向け、次第に強い日差しが照りつけたオートポリス。午後2時50分から始まったQ1・A組では気温21度、路面温度33度まで上昇し、フリー走行とはガラリと変わったコンディション下でのアタックとなる。各車、セッティングはじめタイヤの内圧調整にも気をもむ中、まずA組では牧野がトップタイムで通過。続くB組では野尻がトップ通過を果たした。Q2は午後3時25分にスタート。さらに日差しが強くなって路面温度も上昇。アタックコンディションの変化がクルマにも影響が出たのか、難しいアタックラップになったようだ。
このセッションでは、出走した計12台のうち4台が早々にユーズドタイヤでコースイン。アウトラップを終えて一旦ピットにクルマを戻し、タイヤ交換を済ませてアタックラップのタイミングを待った。各車がアタックに向かったのは、チェッカー5分前あたりから。計測2周目でのアタックを予定するドライバー、逆にワンラップアタックに挑むドライバーらが次々コースに向かったが、コース上ではプランが異なるドライバーたちで一部トラフィックも出た模様。その中でまずは#37 宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)がトップタイムをマーク。さらに、各セクターで宮田とほぼ似通ったタイムを刻んでいた牧野が1000分の5秒差で2番手に浮上する。そんななかチェッカーが出されると、野尻が1分24秒529のタイムでトップを奪取。第2戦から連続3度目、自身通算10回目のポールポジションを獲得することとなった。
決勝日は、朝から澄み渡る青空が一面に広がり、絶好のレース日和となる。一方で、オートポリスはタイヤへの攻撃性が高いことから、気温、路面温度の上昇に伴い、決勝ではタイヤマネージメントが気になるところ。今シーズンから新しいスペックが導入されたリヤタイヤのパフォーマンスを確認すべく、まず午前10時15分からのフリー走行ではロングランによるシミュレーション等、各チームはさまざまなメニューを用意して決戦への準備を進めていた。
午後2時30分、42周による戦いがスタート。ポールポジションから野尻は難なくトップで1コーナーへ。だが、その隣、宮田は予選3番手の牧野に早くも並ばれ1コーナーに進むこととなり、結果として牧野の先行を許してしまう。また後方では、予選5番手の#55 三宅淳詞(TEAM GOH)が予選4番手の#15 笹原右京(TEAM MUGEN)を逆転。そしてその背後、つまり6番手にポジションアップしたのが平川だった。平川は、スタート直後に前の2台をかわし、その勢いのまま今度は3コーナーでラインを大きく外した三宅とそのうしろにいた笹原を一挙にパス。さらには第2ヘアピンで宮田を逆転、一気に3番手まで浮上した。
一方、後続ではアクシデントが発生。3コーナーで2台がコースオフし、そのうちの1台、#65 大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)がクラッシュを喫し、ストップ。早速セーフティカーがコースインする。大湯のクルマが回収され、レース再開となったのは3周終了時。2番手を引き離しながらリスタートを決めた野尻に対し、2番手の牧野はオーバーテイクシステム(OTS)を稼働させてトップに詰め寄るも、逆転には至らず。逆にOTSが使えない状況になった際、背後の平川がこれを好機とばかり、5周目にはOTSを使って1コーナーで牧野攻略を果たした。そんな中、2コーナーでははげしい攻防戦から接触が発生。#7 小林可夢偉(KCMG)がタイヤをバーストさせてコースの真ん中にストップ。2回目のSCランを招くことになった。
リスタートは9周終了時。トップの野尻が10周目に入る中、ここで14番手にいた#12 福住仁嶺(ThreeBond Drago CORSE)がピットイン。ルーティンのタイヤ交換をしたつもりだったが、実際には規定より1周早くピットインしたことになり、最終的にはタイヤ交換義務の未消化の扱いでレース失格という厳しい裁定を受けている。
早々から接触によるSC導入という荒れた展開を見せる中、トップの野尻が15周終わりでピットイン、7.2秒とスムーズな作業でコースへ。上位グループの中でひと足先にルーティンを済ませた牧野や笹原よりも前で復帰を果たすと、迫りくる牧野の猛追をシャットアウトしてみせた。一方、野尻のピットイン後、トップに立った平川はクリーンエアーの中、ペースアップでしばし周回。満を持して20周終わりでピットに戻ってくる。タイヤ交換を担うチームスタッフが急きょ交代することになり、予定よりも時間を要するピット作業となったが、平川はタイヤ交換を終えたグループ内のトップでコースに戻ると、背後につける野尻の追撃を抑え込むことにも成功した。
平川に代わってトップにつけたのは#4 サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)。当初は早めのピットインを予定していたが、周りの状況とタイヤのパフォーマンスを見定め、作戦を変更。安定して速いラップタイムを刻み続け、背後で周回を重ねる”見えない敵”とのマージンを積み上げていった。また、暫定2番手を走る三宅も同様に周回を重ねていく。フェネストラズがピットに戻ったのは、28周終わり。しかし、ピット作業でミスが生じ、痛恨のタイムロス。平川は当然のように先行していたが、復帰後は早速に野尻の追撃に遭い、必死の応戦。野尻もOTSを使って逆転を目論んだが、フェネストラズがなんとかこのバトルをしのぎ切った。
トップ争いの中、最後のピットインを行ったのが三宅。ルーキーながら落ち着いたレース運びを見せ、またチームもタイヤ交換をスムーズにこなして三宅を送り出す。三宅もまたコースに戻ると背後の野尻に再三追い立てられたが、このままポジションを死守。3番手で終盤に向かう。フレッシュタイヤを手に入れたフェネストラズ、三宅はペースアップしながら、トップ平川を追走。その差がじわじわと縮まったが、試合巧者の平川はその動きを把握したかのように、自身もペースアップ。文句のつけようのないタイヤマネージメントとレースコントロールを披露し、トップでチェッカー。開幕戦に次いで今シーズン2勝目を掴み取った。これにより、オートポリスでの戦いを前に、ランキングトップの野尻と16ポイントあった差を7ポイントにまで縮めることに成功している。2位フェネストラズは今シーズンのベストリザルトを獲得。そして、3位三宅は自身初となる表彰台を手に入れた。
予選での上位陣が思うようなレース運びを見せられず、その後方からスタートを切ったドライバー3人が表彰台を独占したオートポリス。好調だった野尻が思うようなレース運びを見せられなかったことで、今後中盤を迎えるシリーズ戦にどのような影響を及ぼすのか。続く第5戦は、6月18~19日、宮城・スポーツランドSUGOにて行われる。
(文:島村元子 撮影:中村佳史)