SF第5戦SUGO、フェネストラズが悲願の初勝利!
6月18、19日、宮城・スポーツランドSUGOにおいて全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦が開催された。予選では第2戦から連続でディフェンディングチャンピオンの#1 野尻智紀(TEAM MUGEN)がポールポジションを獲得。レースではもうひとりのフロントロウ、#4 サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)がスタートダッシュで先行し、波乱含みのレースを冷静に走破して自身初となるスーパーフォーミュラでの優勝を遂げている。
梅雨入りしたばかりの東北地方。だが、レースウィークを迎えたSUGOは予選日から蒸し暑い天気となり、ドライバーにとってはタフなコンディションでの戦いになった。予選日は、朝のフリー走行で#1 野尻智紀(TEAM MUGEN)がトップタイムをマーク。これに#6 大津弘樹(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が続き、さらに#65 大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)とホンダエンジンユーザーがトップ3を占めた。
午後に入ると若干雲が広がり、薄曇りの天気へと変わったが蒸し暑さは変わらず。気温28度、路面温度44度のコンディションとなる中で予選Q1のA組が午後2時にスタートした。しかし、セッション開始直後、コースには赤旗が提示される。最終コーナー付近で小動物がコースを横断するというハプニングがあり、安全を確保するためにしばし中断されることとなった。その後、10分遅れでセッションが再開。改めてアタックが行われると、#20 平川 亮(carenex TEAM IMPUL)がニュータイヤでのアタックを真っ先に始める、だが、周りはまだアタックを控えてタイヤをウォームアップしているクルマがいたため、結果としてリズムを崩す形となり、思ったほどタイムを伸ばせず。折りしも伝統の耐久レース、ル・マン24時間では念願の総合優勝を果たしたばかりだったが、平川はその凱旋レースで思わぬ失速を喫することになった。A組のトップタイム1分05秒148をマークしたのは、#64 山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)。今シーズンはこれまで思うような走りを見せることができず苦しんでいた山本にとっては、復調の兆しとなるアタックになった。これに大津、そして#37 宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)がトップ3として名を刻んだ。
続くQ1のB組には注目の野尻が出走。残り時間わずかになってアタック合戦が繰り広げられる中、野尻は1分05秒015とA組のトップタイムを軽く上回る走りを披露した。ところが、チェッカー目前となり#18 国本雄資(KCMG)が1分04秒954と05秒台を切る好タイムをマーク。すると#5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が1分04秒920と僅差で国本を上回ってトップを奪取し、目まぐるしくトップが入れ替わった。これにより、野尻は3番手でQ1通過となった。
合計12台によるQ2は予定より10分遅れの午後2時40分にスタート。ユーズドタイヤでまず4台がコースに向かい、アウトラップだけでピットへ。ニュータイヤへ交換を済ませ、しばしコースインのタイミングを伺った。一方、他車はニュータイヤを装着してピットで待機し、残り時間が6分となる頃に次々と各車がコースへ向かう。その中で真っ先に04秒台のタイム_1分04秒913を刻んだのが、#12 福住仁嶺(ThreeBond Drago CORSE)。その後、大津が1分04秒785でトップタイムを更新したが、チェッカーが振られる中、今度は#4 サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)が1分04秒706のタイムでトップに立つ。これで決まったかに思われたが、直後に野尻が1分04秒349と圧倒的な速さでトップを奪取。結果、野尻は4戦連続でポールポジションを獲得。フェネストラズ、大津がこれに続いている。
決勝日も朝から気温が上昇し、事実上”夏の決戦”を迎えたSUGO。午前10時10分からのフリー走行でも気温は28度をマーク。路面温度も47度と前日の予選よりもタフなコンディションに見舞われた。
午後2時半からの決勝を前に、8分間のウォームアップ走行が始まると気温は30度まで上昇。真夏日となったSUGOだったが、ダミーグリッドへの試走時には通り雨ながら大粒の雨が一瞬コースを濡らす事態に。幸い、スタート進行の間に強い陽射しによって路面も乾き、ドライコンディションで号砲を迎えた。
鮮やかなスタートダッシュを見せたのは2番手のフェネストラズ。逆に野尻は出足が鈍り、フェネストラズのホールショットを許してしまった。これに続いたのは、予選5番手から一気にポジションを上げた#65 大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)、さらに予選3番手の#6 大津弘樹(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が続く。一方、中団グループではタイトなSUGOの1コーナー進入で行き場を失った#4 山下健太(KONDO RACING)と山本が軽く接触。体勢を崩した山下がスピンし、そのまま2コーナー手前のイン側へとコースアウトしてしまう。なんとか自力でコース復帰を目指した山下だったが、レース直前の雨で濡れた芝生が災いし、タイヤが空転。水温が急上昇したため、あえなくエンジンを止めて戦列を離れた。
なおこのアクシデントにより、レースはすぐさまセーフティカーが導入。車両回収が終わってレース再開となったのは7周終了時点だった。トップのフェネストラズが難なくリスタートを決める一方、2番手の野尻は背後に迫る大湯との攻防戦に。そんな中、#50 松下信治(B-MAX Racing Team)がブレーキトラブルによって1コーナーアウト側にコースアウト。タイヤバリアに激しくクルマが突っ込むほどのクラッシュとなり、またしてもセーフティカーが導入され、クラッシュエリアでは車両回収の作業が始まった。ところがその作業に時間を要し、レースはセーフティカーラン中にタイヤ交換が可能となる10周を迎えることに。ピットに戻るか、ステイアウトするか各車の戦略が気になるなか、10周を終えて真っ先にトップのフェネストラズがピットへ。野尻、大湯、大津がこれに続き、上位4台がタイヤ交換を行ったが、5番手を走行していた#37 宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)はじめ、合計7台がステイアウトを選択する。
フェネストラズは、タイヤ交換を終えてピットイン組としてトップでコースに復帰。ところが野尻はピットでの作業が手間取ったか、大湯に先行を許してしまう。依然としてセーフティカーランが続く中、暫定トップに立った宮田は前がクリーンになった状態で”見えない敵”であるフェネストラズに対してマージンを稼ぎ、15周終わりでレースが再開すると安定した速さで周回を重ね、1秒また1秒とマージンを築いていく。逆にコース上では8番手となるフェネストラズはフレッシュタイヤのメリットを活かせきれず、思うようにタイムアップできずにガマンの走行を強いられる。とはいえ、SUGOでは逆転に必要な約36秒と言われており、30周を消化する頃には宮田とフェネストラズのタイム差は20秒を超えたものの、これ以降は宮田もペースが頭打ちに。一方で、序盤のセーフティカーランが長引いたことで、レースは予定週回数の53周を待たずに70分間のタイムレースにて終了する可能性が濃くなってくる。
残り時間が15分を切る頃、38周を終えた頃からステイアウト組の車両が一台、また一台とピットイン。そしてトップを走っていた宮田もついに46周終わりでピットへ。ところが右リヤタイヤ交換に時間を要し、コース復帰後は6番手へとポジションを落とすことになった。ここでようやく再びトップに立ったフェネストラズは、2番手大湯との差をきっちりキープ。ステイアウト組がいつまでも周回を続けたことに不安を覚えたというものの、高い集中力で最後まで走り抜き70分、49周にわたる戦いを制することとなった。トップフォーミュラへの挑戦3シーズン目のフェネストラズだが、昨シーズンはコロナ禍で来日が叶わず、参戦できたのは終盤の僅か2戦。タフな環境を乗り越え、ようやく実現した初勝利に歓喜した。2位の大湯は今シーズンベストリザルト。また、3位チェッカーの野尻は着実にポイントを重ね、ランキングトップをキープしている。
前半の戦いを終えたスーパーフォーミュラ。後半戦は7月16、17日の両日、富士スピードウェイにおいて第6戦を迎える。
(文:島村元子 撮影:中村佳史)