スーパーフォーミュラ 第6戦 富士 レポート&フォトギャラリー

スーパーフォーミュラ 第6戦 富士 レポート&フォトギャラリー

後半戦突入のSF、第6戦富士で笹原右京が自身初優勝!

7月16、17日、静岡・富士スピードウェイにおいて全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦が開催された。雨模様の中で#19 関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)が今季初のポールポジションを手にしたが、翌日の決勝は波乱含みの展開となり、その中で予選13番手スタートの#15 笹原右京(TEAM MUGEN)が躍進、スーパーフォーミュラにおける初優勝を飾っている。

シーズン後半戦へと突入したスーパーフォーミュラ。富士での開催は、開幕大会以来となる。今年は例年になく全国の梅雨明けが早かったもののその後は不安定な天候が続き、レースウィーク中の富士周辺もからりと晴れるような天気とは縁遠いものだった。16日の予選は午前中のフリー走行開始時こそ雨は止んでいたが、次第に悪化。最後は激しい降雨によってセッションが赤旗終了となった。

迎えた午後の予選も、従来のノックアウト予選からタイムトライアル方式へと変更。全21台が一斉に出走し、計時によるベストラップを競う形がとられた。気温22度、路面温度24度のウェットコンディションでスタートしたセッションでは、時間と共に天候悪化が予想されていたこともあり、各車こぞって早めのアタックに向かう。だが、序盤から単独スピンした車両の回収に赤旗中断となり、時間が経過。再スタート後は存分な視界を確保するのが難しい中、ベストラップ更新を目指すも極めて難しい状況に。加えて再開から15分ほど経って2度目の赤旗中断を迎え、最後は残り7分弱でのセッションが再開した。ところが雨脚がさらに強くなり、残り1分半の段階で天候悪化による3度目の赤旗が提示され、これをもって予選が終了することとなった。

結果、最速タイムをマークしたのは関口。昨シーズン第4戦SUGO以来、通算6回目のポールポジションをゲット。今シーズンは納得のいかない結果が続いていただけに、決勝での活躍に期待がかかった。2番手タイムをマークしたのは、#38 坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)。こちらも久々の予選上位を獲得となる。そして3番手時計は#1 野尻智紀(TEAM MUGEN)がマーク。第2戦からの連続ポールポジション達成は果たせなかったが、予選上位3台に与えられるポイントを加点し、チャンピオン争いではまたもライバルとの差を広げてみせた。一方、その野尻をランキングで追う#20 平川 亮(carenex TEAM IMPUL)は、ベストラップが走路外走行の扱いとなり6番手から11番手にドロップ。また、前大会の覇者でランキング3番手の#4 サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)も7番手に留まる結果に甘んじた。

翌日の決勝は雨こそ回避する天候になったが、サーキット上空のところどころに重い灰色の雲が広がる天気に。レースもまた、混乱続きの慌ただしい展開となり、波乱含みの結末を迎えることになった。レースはドライコンディションでスタート可能となったことから、全車スリックタイヤで決戦を火蓋が切られる。だが、この直前、フォーメーションラップでタイヤを温めていた#50 松下信治(B-Max Racing Team)がバランスを崩し、メインストレート手前でグリーンにマシンを止めてしまう。また、松下のオフィシャルによる車両回収のためにスタートが仕切り直しとなり、エキストラフォーメーションラップが行われた。結果、松下はスタートの権利を喪失し、DNS扱いとなる。

従来の41周から40周へと減算して行われた決勝。1コーナーへのホールショットを関口が見事に決めて、レースを牽引。その後方には、スタートで坪井を制した野尻が続く。ところが、その後方では、1コーナーへのアプローチで3台のクルマが接触。ポジションアップを決めた平川だったがコースアウトを喫してその場でストップ、さらに#55 三宅淳詞(TEAM GOH)もクルマのダメージを受け、ピットに戻るもコース復帰は叶わなかった。なお、残る1台となった#65 大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING) には、のちにドライブスルーペナルティが課せられれいる。さらに3周目の2コーナーでは、フェネストラズを攻略しようと猛追中の#64 山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)とフェネストラズの走行ラインが交錯し、接触。この弾みでスピードに乗ったままフェネストラズがスピンしたままガードレールにヒット。クルマは激しく破損する大きなアクシデントになった。レースはこれを受けてセーフティカーを導入。幸いフェネストラズには大きな怪我はなかったという。

車両回収が終わり、レースは9周終わりでリスタート。関口のトップは不動で、翌周には2番手の野尻がルーティンのピットインを行うことで揺さぶりをかける戦略を採った。一方の関口のピット前にも交換用のタイヤが設置されていたが、その後も走行を続け、”見えない敵”となった野尻とのタイムギャップを広げることに集中する。

20周を前にして、関口と野尻のタイム差は42秒3まで広がり、十分なギャップを構築した関口は25周終わりでピットイン。待ち構えたスタッフは5.3秒という驚くべき最速の作業で関口をコースへと送り出した。関口はトップを明け渡すことなく優勝へまっしぐら……と思われたのだが、アウトラップ走行中のダンロップコーナー先で挙動を乱してまさかのスピン! あろうことか左リヤタイヤがはまっておらず、外れるというハプニングに見舞われる。関口はこれで優勝の好機を絶たれてしまい、またコースにはセーフティカー導入がアナウンスされた。

一方、このハプニングと時を同じくしてピットでは、2番手だった坪井がタイヤ交換の真っ最中。コース復帰時に「SC」のボードを目にした坪井は、セーフティカーラン中と解釈し、ペースを上げないまま周回を始めてしまう。しかも坪井は関口の離脱によって事実上のトップだった野尻の前でコースに復帰していたことにより、野尻をはじめとする上位陣も、コースインしたセーフティカーの背後につけるまではレーシングスピードでの走行ができたものを、結果として坪井のペースに付き合わざるを得ない事態になってしまった。だが逆に、坪井の後からピットインしてコース復帰した3台は、レーシングスピードでセーフティカーの後方につけることに成功。3台の中で最上位だった笹原が運も味方にしてトップを奪取した。事の事態に気付いた坪井はプッシュして笹原を追うが、逆転には至らず。これにより、2020、21年とスポット参戦を経て、今シーズンギリギリのタイミングでフル参戦のチャンスを手にした笹原が悲願の初勝利を達成することとなった。悔しすぎる2位の坪井だが、彼もまた今シーズン初の表彰台を獲得。そして3位には野尻が続き、さらにポイントを計上。タイトル争いに向けていっそう優位な立場となっている。

早いもので、今シーズンは残り2大会となるスーパーフォーミュラ。次大会の舞台となるモビリティリゾートもてぎでは、8月20、21日に第7、第8戦の2レースを開催。真夏のもてぎで繰り広げる二日連続のワンデーレースは、タフな展開になりそうだ。

(文:島村元子 撮影:中村佳史)