不安定な天候を味方につけたCRAFTSPORTS MOTUL Z、今季2勝目を挙げる
<GT500>
9月17、18日にスポーツランドSUGOにてSUPER GT第6戦が開催され、#3 CRAFTSPORTS MOTUL Z(千代勝正/高星明誠組)が不意打ちのような降雨とこれに伴う難しいコンディションをものともせず、他車を出し抜く冴えた戦略で優勝を果たした。今シーズン、2勝目を挙げた3号車はこの結果によって、シリーズランキングで暫定トップに立っている。
9月中旬とはいえ、強い日差しと湿度の高いコンディションの中で迎えた第6戦。体感的に残暑を感じるような天候の下、ノックアウト予選では、またしても”あのチーム”が躍進した。一方で午前の公式練習中はダンロップタイヤ勢が好タイムをマークすると、Q1でもその勢いを堅持。#16 Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT(笹原右京/大湯都史樹組)がトップタイムを叩き出した。たが、Q2に入ると、他のタイヤメーカー勢も躍進。結果、ポールポジションを手にしたのは、#19 WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/阪口晴南組)。第2戦から3戦連続最速ラップをマークする19号車にとって、シーズン4度目のポールポジション獲得となった。また、2番手には#38 ZENT CERUMO GR Supra(立川祐路/石浦宏明組)が続き、3番手は23 MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)と、それぞれ異なるタイヤを装着するチームがトップ3を占める結果だった。
決勝日となる日曜は、前日よりさらに湿度の高い一日。一方で、急に曇り空が広がって雨がパラパラと降り始めるような落ち着きのない天候になる。そして、レースでもこの先行きが読みづらい降雨となり、ちょっとしたタイミングによって大きく順位が変動する展開となった。まずはスリックタイヤで84周の戦いが始まると、すぐさまGT300車両同士の接触が発生。早速セーフティカーが導入される。さらに開始から30分も経たないうちに雨が降り始め、これを好機に変えるべく2周の間に10台がピットに戻り、ウェットタイヤを装着。さらに2台が後を追ったことで、ステイアウトを選択したのは3台となった。その後、コース上ではGT300車両がコースアウトし、FCY(フルコースイエロー)導入の可能性を見越す形で、暫定トップにいた16号車と23号車が20周終わりでピットに舞い戻る。両者、絶妙なタイミングでのタイヤ交換だったが、その中でも23号車は16号車をピット作業で逆転。ひと足先にコースへ復帰した。
水を得た魚のように、23号車は1台また1台とポジションアップ。3号車もこれを倣うように後に続き、ミシュランタイヤがワン・ツーを形成する。逃げる23号車に対し、3号車は怒涛の追い上げ。そんな中、44周終わりで23号車はルーティンのピットイン。この直前、GT300車両同士が接触し、SCになるのではと読んだ23号車は引き続きウェットタイヤを選択。だがその後、SC導入は見送られ、加えて次第に路面も乾き始める。他車もスリックへと戻し始める一方で、3号車はステイアウトを選択。不安定な路面コンディションの中で懸命の追い上げを続け、55周終わりでピットイン。ルーティン作業であるドライバー交代、給油、そしてスリックへのタイヤ交換を実施。ライバルたちより1回作業を減らせたことで、3号車がトップへと躍り出ることに成功した。
逃げる3号車に対し、23号車は猛プッシュするも、30秒近くできた差を縮めるのは至難の業。それでもなお、懸命の追い上げにどんどん差を詰めていった。が、3号車はその様子をしっかりと見極めてドライブ。結果、3号車はトップチェッカーを受け、2位に23号車が続いた。そして3位にはレース序盤から安定した速さとミスのないレース展開を果たした16号車となっている。
<GT300>
予選13番手スタートだった#2 muta Racing GR86 GT(加藤寛規/堤 優威組)が、シーズン初優勝を果たしたGT300クラス。序盤の時点でウェットタイヤへ交換したが、その後、2回目のピットインまで粘りの走りを披露する。一方、クラストップ争いは、逃げる#61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)と追いかける#87 Bamboo Airways ランボルギーニ GT3(松浦孝亮/坂口夏月組)、さらにNo.88 Weibo Primez ランボルギーニ GT3(小暮卓史/元嶋佑弥組)が着実な周回を見せていた。しかし、このうち87号車がハイポイントコーナーでコースオフ。これを機に、FCY導入がなされた。ところがこのタイミングになっても、上位は引き続きスリックタイヤで周回。ルーティン作業時に合わせてタイヤ交換を済ませようという戦略に賭けた。
その一方で、2号車は路面コンディションに見合うクルマを武器に周回を重ね、着実にポジションアップを果たしていく。そしてトップに躍り出た2号車はウェットタイヤのまま、スリックタイヤで猛追する後続車をシャットアウト。さらにライバルたちよりかなり遅いタイミングとなる49周終わりでルーティンの作業を行うと、足下にはスリックタイヤが装着された。しっかりとギャップを広げていた2号車はトップの座を譲ることなくコースに復帰。その後は独走に近い形で周回を続け、待望のシーズン初優勝を遂げた。同じチーム同士による激しい2位争いとなった#11 GAINER TANAX GT-R(安田裕信/石川京侍組)と#10 TANAX GAINER GT-R(富田竜一郎/大草りき組)。この2台は雨を味方に後方グリッドから大きくジャンプアップを果たすと、終盤にはテール・トゥ・ノーズを展開。11号車が10号車を0.4秒の僅差で下している。
今シーズンもいよいよ残すところあと2戦。サクセスウェイトも半減されるため、これまでとはまた異なる展開が期待できる。舞台となるのはタイヤに厳しいと言われるオートポリス。今大会は、天候とタイヤパフォーマンスの関係性が大きな影響を与えたレース展開だったが、次戦は、どのようなドラマが待ち受けているのだろうか。楽しみは尽きない。
(文:島村元子 撮影:中村佳史)