第9戦の覇者は笹原右京。野尻智紀が2位に続き、チャンピオンを決める!
10月29日、三重・鈴鹿サーキットにおいて、全日本スーパーフォーミュラ選手権第9戦の予選および決勝が開催され、予選5番手スタートの#15 笹原右京(TEAM MUGEN)が逆転を果たして今季2勝目を挙げた。一方、ポールポジションからスタートを切った#1 野尻智紀(TEAM MUGEN)は2位でフィニッシュ。最終戦を待たずして2年連続でチャンピオンを決めた。
最終大会の鈴鹿も、前回同様に1大会2レースによる開催となり、その前日の金曜日には、1時間半の専有走行の時間が設けられた。このセッションで16番手という不本意なタイムで終えていた野尻。前夜は遅くまでエンジニアらとミーティングを重ね、予選に挑んだという。そのがんばりが結実して、まずQ1・B組では4番手のタイムをマーク。Q2進出を果たした。そのQ2では、これまでの不調をきれいさっぱりと拭い去るようなアタックを決め、好タイムを連発する若手ドライバーの躍進を一蹴。今シーズン5度目のポールポジションを掴み取り、改めてライバルに対して速さを見せつけた。一方、野尻とともにタイトル争いでチャンピオンの可能性を残していたのは、ランキング2位の#4 サッシャ・フェネストラズと同3位の#20 平川亮のふたり。だが、フェネストラズはQ1・A組でタイムを伸ばせず敗退し、総合17番手に留まる。さらに平川もQ1こそB組の3番手通過だったが、12台が出走したQ2では11位とライバルに遅れをとる結果に。これによって野尻がタイトルに王手をかける形で決勝を迎えることになった。なお、予選では、2位に#37 宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)、3位に#65 大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)が続き、ともにシーズン初優勝をかけて好位置を手に入れている。
朝の予選からおよそ4時間半のインターバルを経て、31周の決勝レースは午後2時30分に号砲。メインストレートでは強く冷たい追い風が吹くコンディションとなり、レース中のタイヤマネージメントやセットアップの調整において、ぎりぎりまでドライバーやエンジニアを悩ませるような状況となった。そんな中、ポールシッターの野尻はクリアスタートを決めたが、同じフロントロウスタートの宮田は出遅れ、逆に3番手の大湯、さらにはその後方についた予選5番手の笹原がポジションを上げて周回が重ねていく。中でも笹原は3周目から4周目にかけてメインストレートで大湯に迫ると1コーナーで逆転に成功。その勢いのままトップの野尻に迫った。しかし、タイヤ交換が可能となる10周目を終えるとまようことなくピットイン。だが、左フロントタイヤ交換でタイムロスが生じるハプニングが発生。なんとか同じ周回でピットに戻った大湯を封じ込め、コースに復帰を果たした。笹原はこのタイムロスを挽回すべく、アウトラップからハードプッシュ。翌周の11周終わりにピットインして6.6.秒の停止時間で作業を終えた野尻がコースに復帰すると、笹原はその背後から猛追し始めた。充分にタイヤが温まった笹原は、野尻を完全に射程に収めると、ヘアピンで一気に勝負に出て逆転。野尻を攻略し、タイヤ交換を終えたドライバーの中でトップに躍り出ると、その後もペースを緩めることなく周回を重ねた。これに対し、ややペースが劣ると判断した野尻は、笹原との一騎打ちよりもタイトル獲得を優先しながらタイヤマネージメントに徹する走りへとスイッチする。
一方、中盤以降トップを走っていた宮田は、ライバル勢が次々とルーティンのピット作業に取り掛かるのを尻目に周回を重ねていく。迎えた25周終わり、満を持してピットインしたが、なんと左リヤタイヤの交換に大きく手間取り、停止時間が13.4秒と大きくタイムロス。これで勝負権を失い、6番手までポジションを下げてしまった。また、全ドライバーの中で最後のピットインを行ったのは、平川。前方がクリアになり、大きくペースアップすることは叶ったが、存分なポジションアップには至らなかった。
この時点でようやくトップへ立った笹原。2番手の野尻に対し、じわりじわりと差をつける力走を続け、独走態勢。一方の野尻はその流れに逆らうことなくレースをマネージメントする。だが、その後方では3番手争いが佳境を迎える。大湯が長らくポジションをキープしていたが、No.53 佐藤 蓮(TEAM GOH)が瞬く間に背後に迫り、表彰台を巡る攻防戦が繰り広げられた。これより前、4番手を走行していたNo.19 関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)に急接近した佐藤は、バックストレートから130R、さらにシケインからメインストレートと幾度となく関口と激しいバトルを繰り広げ、OTSをも駆使してついに27周目のメインストレート上でベテランの関口を逆転、この勢いのまま今度は大湯へとアプローチ。28周目の130Rでも、関口のときと同じように大湯に迫った。なんとか大湯がポジションキープでメインストレートへと戻ってはきたが、ここでOTSを活かした佐藤が鮮やかに逆転に成功!このまま逃げ切り、ルーキーが待望の3位表彰台を初めて掴み取ることとなった。
第6戦に続き、今シーズン2勝目を挙げた笹原。前回はセーフティカーを味方にしての勝利だったが、今回はディフェンディングチャンピオンの野尻に12秒強の大差をつけての完勝。また、2位でシリーズチャンピオン2連覇を決めた野尻だが、シリーズ2連覇は2007、2008年に王者となった松田次生以来の快挙となる。またチームは笹原、野尻両選手がワンツーフィニッシュを果たしたことで、初のチームチャンピオンも手にする結果となった。
(文:島村元子 撮影:中村佳史)