JAF GPとなる第10戦は、野尻智紀が優勝!
10月30日、三重・鈴鹿サーキットにおいて、JAF GPの一戦となる全日本スーパーフォーミュラ選手権の最終戦が開催され、前日の第9戦でシリーズ二連覇を達成した#1 野尻智紀(TEAM MUGEN)がポール・トゥ・ウィンで今シーズン2勝目をあげ、理想的な形で今シーズンを終えることになった。
前日に引き続き、絶好の秋晴れに恵まれた鈴鹿。午前9時5分からのノックアウト予選では、全ドライバーがシーズン最後のタイムアタックに向けて、ベストを尽くすことになった。まずQ1・A組は#5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がトップタイムをマーク。対するQ1・B組では前日にシリーズ2連覇を果たした#1 野尻智紀(TEAM MUGEN)が文句なしのトップ通過を決めた。
続く、Q2でも野尻は快走。チャンピオンの貫禄を見せつけるかのようなアタックへのアプローチを見せ、真っ先に1分36秒003の好タイムを叩き出す。このあと、続々とアタックを終えたライバルたちがチェッカーを受けるものの、誰ひとりとして野尻のタイムを上回れず。これにより、野尻がシーズン6度目、通算13回目のポールポジションを手にした。なお、13回目獲得は現役最多タイ記録となる。
野尻に続いたのは#37 宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)。第9戦同様にフロントロウを獲得した。そして3番手には#6 大津弘樹(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。第9戦ではQ1敗退を喫しており、そのリベンジを果たす形となった。
小春日和のなか、決戦を前にしたサーキットでは、観客を入れてのピットウォークで写真撮影やサイン会が久々に行われ、また、コース上では車両開発が進む次期車両のお披露目走行など、さまざまなイベントで大いに盛り上がり、活気に溢れていた。
最終決戦は午後2時30分にスタート。31周の戦いは、気温21度、路面温度32度と前日よりも穏やかな陽気に包まれるようなコンディションのもとで繰り広げられた。ポールシッターの野尻がクリアスタートを決める一方、その隣、予選2番手の宮田はまたしてもスタートで出遅れ、同3番手の大津、さらには同4番手の#15 笹原右京(TEAM MUGEN)にも先行された。一方、後方では1台の車両が1コーナー進入で態勢を崩してコースアウト、クラッシュバリアに突っ込んでしまう。結果、早々にセーフティカーが導入されたが、翌2周終了をもってレースはリスタート、ここでも野尻は後続を大きく引き離してみせた。
5周目、ランキング2位の座を巡って同ポイントで戦う#20 平川亮(carenex TEAM IMPUL)と#4 サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)が激しいバトルを展開。4周目のシケイン進入でサイド・バイ・サイドに一旦持ち込み、そのあと最終コーナーでは平川の背後にピタリとつけたフェネストラズは、ストレートエンドでスリップストリームにつけると1コーナー進入手前でイン側へとラインを変えて、平川をパス。一気に引き離しにかかる。そんな中、トップ野尻が10周を終えてピット作業が可能になると、4位以下が続々とピットイン。さらにその翌周には2番手の大津が動いた。そんな中、12周目のシケインでタイヤ交換を終えた笹原と#38 坪井 翔(P.MU/CERUMO・INGING)が接触。フロントウィングを傷めた笹原はそのままピットへ向かい、フロントノーズ交換作業に入った。なお、シケインはその後さらに別の車両2台が接触。そのうちの1台、#50 松下信治(B-MAX Racing Team)がコースアウトし、クラッシュしたため、2度目のセーフティカーが導入された。
これを見て、13周目終わりでピットへと舵を切ったのがトップの2台。チームのピットは笹原の緊急ピット作業を終えたばかりだったが、慌てることなくタイヤ交換を済ませ、野尻をコースへと送り出す。見事に野尻はトップを明け渡すことなく、レースを再開させた。しかし、宮田はひと足先に作業を終えてペースアップしていた大津に逆転を許すことになる。この後、レースはトップ野尻が後続との差がある中で、ときにオーバーテイクシステム(OTS)を使ってひたすらプッシュするなど、独走態勢を固めていく。2位大津もペース良く走り、3位宮田は後続のフェネストラズに差を詰められながらも攻防戦までには至らず。トップ3はそれぞれが膠着状態でレースは終盤に向かっていく。
逆に後方ではシーズン最後の戦いで少しでも好成績を残そうと、激しいポジション争いが勃発。OTSを使った攻防戦を展開した。中でも、入賞圏内を目指し、12番手を走行していた#7 小林可夢偉(KCMG)は、25周目のシケインでレイトブレーキングを見せ、前の2台に急接近。最終コーナーからメインストレートにかけてスリーワイドに持ち込むと、OTSを多用して瞬く間に2台を攻略。イン側からするりと前に出て1コーナーを立ち上がるというベテランの技を披露し、10位をもぎ取った。
終盤、トップ野尻は存分にOTSを使い切り、文句なしの独走でチェッカー。第2戦以来となるシーズン2勝目を達成し、今シーズンのチャンピオンに相応しく有終の美を飾ってみせた。2位大湯は今季初表彰台を獲得。また宮田にとってもシーズン2度目の表彰台に。ランキングも、2位フェネストラズ、3位平川に次ぐ4番手に浮上し、戦いを終えている。
(文:島村元子 撮影:中村佳史)