STANLEY NSX-GTが待望の今季初勝利。王者はカルソニックIMPUL Z!
<GT500>
11月5、6日に栃木・モビリティリゾートもてぎにおいて今シーズンの最終戦となるSUPER GT第8戦が開催された。序盤から荒れ模様となったレースながら、ポールポジションスタートの#100 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐組)が巧みなレース運びを見せて完勝。待ちわびたシーズン初優勝を遂げた。また、シリーズチャンピオンは#12 カルソニックIMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット組)が逆転で掴み取っている。
晩秋のもてぎは、レースウィークを通して穏やかな小春日和に恵まれ、日中は日が差し込んだ。気温、路面温度も緩やかに上昇。それがノックアウト予選でのコースレコード更新に繋がったか、100号車の牧野が1分35秒194のタイムで従来のレコードタイムを上回って、シーズン初、そして自身初となるポールポジションを手に入れた。2番手には、今シーズン予選で都度速さを見せてきた#19 WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/阪口晴南組)。そして3番手にタイトル争いでトップと2.5点差の#12 カルソニックIMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット組)は続き、逆転王者に向けて好位置につけることとなった。
決勝日も朝こそ冷え込んだが、雲も少なく風もまた無風に近い状態で、絶好の観戦日和となったもてぎ。決勝前に行なわれたウォームアップ走行の時点で気温は17度、路面温度は28度と前日の予選と似通ったコンディション。しかもさらに日差しが降り注ぐ好天気が続き、決勝直前には気温18度、路面温度にいたっては31度まで上昇した。
午後1時、シーズン最後の戦いの火蓋が切って落とされ、63周の戦いが始まると、ポールスタートの100号車は早くも逃げを打つ。また、タイヤの温まりで苦戦したか2番手19号車は早速12号車の追撃を受け、3コーナーで逆転を許してしまったが、S字でポジション奪還を果たす。一方、後続車両は5コーナーで予選4位の#3 CRAFTSPORTS MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)と好スタートでポジションを上げた#8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組)が接触。このアクシデントで8号車がスピンしてポジションを落とすと、対する3号車には後にドライブスルーペナルティが科せられた。積極的な攻防戦でポジションの入れ替えも見られる一方、100号車は順調に後続との差を広げにかかり、6周終了時には8秒近いギャップを作り上げた。
そんな矢先、9周目の3コーナーにおいて多重クラッシュが発生。GT300、GT500両クラスが絡む接触事故でGT500では2台が早々に戦列を離れることになった。また、このアクシデントを受けてFCY(フルコースイエロー)が導入され、10周目にはSC(セーフティカー)ランへと切り替わる。クラス別に隊列を整い、改めて仕切り直しを行ない、あとはレース再開を待つのみだったが、あろうことかメインストレート上においてGT300のクルマが前の1台に追突。2台はひどいダメージを負い、パーツがコース上に散乱。SCランが延長された。
レースリスタートは21周から。一旦築いたマージンが消滅してしまった100号車だったが、そのままトップキープに成功し、後続との差を広げにかかる。また、19号車も前後車両との差が開き、単独走行に。逆に激化した3位争いでは、4番手の#17 Astemo NSX-GT(塚越広大/松下信治組)がヘアピン入口で12号車を逆転。だが、12号車もひかず、ストレートエンドのブレーキングでポジションを奪い返す攻防戦を繰り広げた。そんななか、22周を終えて5台がルーティンのピットイン。この中に19号車も含まれていたことから、その翌周には100号車もピットへと戻り、アンダーカット阻止に動いた。このあとも立て続けに上位陣がピットイン。36周終わりで最後の1台が作業を終えると、再び100号車がトップに立った。
トップ100号車に対し、12号車もペースアップするが、思うように差は縮まらず。実のところ、100号車は12号車を警戒しつつ、アクセルをオフにした状態で惰性でクルマを走らせる燃費走行_コースティングでペースをコントロール。ギリギリの燃費でチェッカーを目指していたというが、見事に後続の猛追をシャットアウトすることに成功した。これにより、100号車が待ちわびたシーズン初勝利をポール・トゥ・ウィンで達成。昨シーズンまでチーム総監督を務め、今春逝去された高橋国光氏へ勝利を捧げた。続く2位でチェッカーを受けた12号車も、ランキングで3号車を逆転。平峰、バゲット両選手ともGT500初タイトルを手にし、またTEAM IMPULにとっても27年ぶりとなる戴冠に歓喜した。3位には14号車が入り、開幕戦勝利以来となる久々の表彰台に立った。ランキングでは王者となった12号車に続き、3号車が2位、そして最終戦で勝利した100号車が3位をもぎ取った。
<GT300>
GT300クラスはランキング上位の2台_#56 リアライズ 日産メカニックチャレンジ GT-R(藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)と#61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)がレースで苦戦を強いられた。まず、予選アタック中にクラッシュを喫した61号車。明け方まで修復作業が続き、本調子でないままレースを戦うことになり、16番手スタート、20位チェッカーの結果に甘んじる。一方、6番手スタートとなった56号車は、背後からスタートを切る2台の候補車よりも前でチェッカーを受ければタイトル獲得の状況だった。一方、予選で最速ラップをマークしたのは、#55 ARTA NSX GT3(武藤英紀/木村偉織組)。待望のシーズン初ポールをルーキーでもある木村が掴み取っている。
決勝では、55号車がスタートを決めたが、3コーナーのアウト側から予選2番手の#18 UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/太田格之進組)が勢いよく逆転に成功。55号車がこれを僅差で追う形になった。また、レース序盤に発生した多重クラッシュを受け、FCYさらにSCランが長く続き、各チームの戦略に差が生じる。
目下、56号車の”ライバル”となっていたのは、#10 TANAX GAINER GT-R(富田竜一郎/大草りき組)、そして#52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰組)。56号車の真後ろにいた10号車が24周終わりでピットに向かうと、これを追う形で52号車もピットへ。作業時間を含め、トータルでの”時短”に成功した52号車は、10号車を従えるような形でコース復帰を果たすことに。また、この翌周にピットインした56号車は作業に時間がかかり、52号車だけでなく10号車にも先行を許す形となった。
なお、暫定トップの18 号車26周終わりで行ったピット作業に手間取り、大きくタイムロス。これで、クラスポールスタートの55号車がトップへと返り咲き、他車と大きくタイミングをずらして行った36周終わりのピットインも完遂。トップをキープしたままレース後半に突入した。そんななか、タイトル争いの3台は6〜8番手を走行。ルーティン作業を終えていない車両を除けば、実質2〜4番手の争いとなり、このままなら56号車がチャンピオンとなる。だが、その矢先、42周目の3コーナーで挙動が乱れ、4〜5コーナーでスロー走行となった56号車の右フロントタイヤが脱輪。息も絶え絶えピットへ帰還を果たし、新たにタイヤを装着してコース復帰は果たしたが、19位へと大きくダウン。56号車に暗雲が立ち込めた。
これでチャンピオンの確率が跳ね上がったのは、10号車(大草のみ)。しかし、52周目の3コーナーで#87 Bamboo Airways ランボルギーニ GT3(松浦孝亮/坂口夏月組)に逆転を許し、4番手へ。これでチャンピオンの可能性が2番手走行中の52号車(川合のみ)へと動く。トップ快走中の55号車と52号車とのギャップは7秒弱。優勝が必須条件の中、逆に勢いにのる87号車が52号車を猛追して57周目に逆転。これで52号車のチャンスが遠のいてしまった。入賞圏外で走行中の56号車に対し、残る10号車は5位死守がマスト。ところが、ファイナルラップ目前で#88 Weibo Primez ランボルギーニ GT3(小暮卓史/元嶋佑弥組)が急接近。ファイナルラップの4コーナーでついに先行を許し、88号車が先行した。これで10号車は事切れたかのように8番手までドロップ、タフな戦いを終えた。
激闘の展開を見せたGT300は、終盤にトップに返り咲いた55号車が念願のシーズン初優勝を達成。2位にはチャンピオン争いにおいて、”キーマン”となった87号車が続き、こちらもシーズン初表彰台を獲得した。3位の52号車も第7戦に続く表彰台となった。そして、シリーズチャンピオンには56号車が収まり、2年ぶりのタイトル奪還を果たすことに。ランキング2位は61号車、同3位は10号車の大草(冨田は1戦欠場)が獲得している。
(文:島村元子 撮影:中村佳史)