スーパーフォーミュラ 第7戦 もてぎ レポート&フォトギャラリー

スーパーフォーミュラ 第7戦 もてぎ レポート&フォトギャラリー

SF第7戦もてぎ、野尻がポール・トゥ・ウィンで今季2勝目!

8月19、20日、栃木・モビリティリゾートもてぎにおいて、全日本スーパーフォーミュラ選手権第7戦が行われた。厳しい暑さの下、レースもアクシデントなどで赤旗中断を含む混乱の展開となったが、そのなかでわが道を行く戦いを完遂した#1 野尻智紀(TEAM MUGEN)が落ち着いたレース運びでトップチェッカー。開幕戦以来となる勝利に喜びを爆発させた。

前大会から1ヶ月あまり。日本各地で不安定な天候が続き、加えて厳しい暑さに見舞われることが多くなっているため、レースウィークのもてぎではどのようなコンディション下で戦うことになるのか、ベストパフォーマンスでのレースを目指して各チーム、ドライバーは朝のフリー走行からさまざまなメニューに沿って走行に取り組むことになった。

予選日の最初のセッション、1時間半に渡って行われたフリー走行でトップタイムをマークしたのは、ディフェンディングチャンピオンの野尻。ポールポジションからの逃げ切りレースを真骨頂とする野尻は、シーズン序盤のスタートダッシュを決めたものの、その後はチームメイトであり、F1に近いと言われる#15 リアム・ローソン(TEAM MUGEN)の躍進、さらには自身が第4戦オートポリスを病欠するなど、今シーズンは理想とする流れを築けてはいない。今回は、地元に一番近いサーキットで復調を遂げるのか、気になるところだ。

迎えたノックアウト予選。強い日差しがピットロード付近を照りつけ、気温33度、路面温度46度というタフなコンディションとなる。まず、Q1・A組でトップ通過を果たしたのは、前大会のポールシッターである#5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。これに#19 関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、ローソンが続く。一方、Q1・B組では、現在のポイントランキングトップである#37 宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)と野尻がトップ2で終わるかと思った瞬間、昨シーズンのもてぎでポールポジションを手にしている#53 大湯都史樹(TGM Grand Prix)が宮田に対して0.3秒近くの差をつけトップタイムを叩き出した。

12人が出走したQ2。上空には薄い雲が広がり、アタックコンディションに変化が訪れる。その中でほぼチェッカーフラッグと同時にフィニッシュラインを通過した#7 小林可夢偉(Kids com Team KCMG)が暫定トップタイムとなる1分32秒370を刻んでトップへ。ここから各車続々と自己ベストタイムを刻み始め、トップが目まぐるしく変わったが、野尻がマークした1分31秒955のタイムを上回るドライバーは現れず。結果、野尻が開幕戦富士大会の第2戦以来、シーズン3度目のポールポジションを掴み取った。2位には、#6 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。前大会富士では予選3番手につけており、好調さをしかとアピールした。そして、3位にはローソンが続き、ドライバーポイント1点を加算。ランキングトップである宮田が予選8番手に甘んじたため、ふたりは同ポイントで翌日の決勝に臨むことになった。

夏休みが終盤へと向かう中、サーキットには、数多くの親子連れが訪れていた。決勝レースは、午後3時15分に号砲。朝から照りつける日差しが眩しく、瞬く間に気温が上がったもてぎ。だが、決勝レース目前に雲が広がり、気温、路面温度ともに少し下降。33度、46度というコンディションで37周の戦いが幕を開けた。

ポールポジションの野尻はクリアスタートを決めるも、もうひとりのフロントロウ、太田は痛恨のエンジンストール。グリッドから動けず、後続車両に飲み込まれた。さらに、宮田もアンチストールが動き、大きく出遅れる。一方、トップ争いは、逃げる野尻に予選3番手のローソンが迫り、サイド・バイ・サイドで2コーナーから3コーナーへと向かう中、2コーナーでアウト側の縁石に乗ったローソンがクルマのバランスを崩してスピン。そのままコース中央に戻ってくる。このアクシデントにあおりを受けるような形で、関口、さらに牧野がクラッシュ、ともにクルマが宙に浮き、大きなダメージを受けることとなった。加えて、この2台を避けきれなかった#50 松下信治(B-MAX Racing Team)もイン側のガードレールにクラッシュ。3台による多重クラッシュが発生したことで、レースはすぐに赤旗が提示されて中断となった。

なお、このアクシデントの原因を作ったローソンだが、コース復帰は果たしたものの、ダメージを負ったことでピットイン。待ち構えたスタッフが赤旗中断中から修復作業に着手した。結果、レース再開時にコース復帰は果たしたものの、その後、赤旗中の作業に対してのペナルティが科せられ、ローソンは今大会での入賞を逃す結果に終わっている。一方、コース上に残った車両は18台。作業解禁を待って、複数台のクルマがタイヤ交換やパーツ交換を実施した。

レースは午後3時50分に再開。セーフティカー先導で2周を周回、4周目にリスタートを迎える。トップ野尻は落ち着いてポジションをキープ。背後には大湯、平川が続いた。ゆさぶりをかけたい大湯は、ルーティンの作業が可能となる10周終了を待ってピットイン。これに後続車両も続いたが、この時、ピットからコースへ向かおうとした太田とピットに戻ってきた#65 佐藤蓮(TCS NAKAJIMA RACING)とが接触。ともにクルマへダメージを負い、上位入賞の機会を逃すこととなった。また、今大会では好調の走りを見せ、表彰台の可能性があった小林がその翌周にピットインするも、右リアタイヤ交換で手間取り、タイムロス。ポジションを下げてしまった。そんな中、V字コーナー周辺で降雨というアナウンスが入り、レースはウエット宣言が出される。だが、その後もウエットコンディションになるまでは至らず、周回を重ねていく。

落ち着きのないレース展開ながら、トップ野尻は動じることなく順調に周回。ひと足先にピット作業を終えて野尻を追う大湯とのタイム差を意識しつつ、25周終わりでピットイン。7.2秒の好タイムで作業を済ませると、見事大湯の前でコース復帰を果たした。これに続けと暫定2位を走行していた平川が翌周にピットへ。だが、右リアタイヤ交換に時間がかかり、9.4秒を要してしまう。結果、大湯の背後でコース復帰はしたものの、24周終わりで作業を済ませていた#64 山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)に追い立てられてテール・トゥ・ノーズ状態に。接近戦の2台は並んで90度コーナーへと進入し、イン側に飛び込んだ山本の左フロントが平川の右リアと接触。平川はハーフスピンを喫する。幸い態勢を大きく崩すことなく先行する山本を追い始めたが、メインストレートに戻ってきた山本が、逆に失速。左フロントの足回りに大きなダメージを負ったのか、先の1コーナーでストップし、万事休すとなった。

レースは終盤を迎え、トップ野尻に対して大湯は遅れを取る一方。逆に平川に差を詰められ、33周目のS字コーナーであっさりと逆転を許してしまった。平川は、その後もハイペースで周回を続け、トップ野尻を猛追したが、接近戦に持ち込むまでには至らず。これにより、野尻が開幕戦以来となるシーズン2勝目を達成。タフな一戦で自身通算10勝目をマークしている。2位の平川も今シーズンベストリザルトを残し、3位の大湯はシーズン初の表彰台に立つ結果となった。

今大会の結果により、宮田が4位入賞を果たしたことから、依然として暫定ランキングトップは宮田のまま。これにローソンが続き、3位野尻までトップ3は不動となったが、野尻が今回大量得点を加算し、ローソンとの差を僅か2点まで縮めている。最終戦の鈴鹿大会はワンデーレースが2回実施されることから、野尻の大逆転3連覇実現もより現実味を帯びるようになった。

これまでおよそ1ヶ月ごとにレースが開催されてきた今シーズンのスーパーフォーミュラ。最終決戦は10月28、29日に開催されるため、およそ2ヶ月のインターバルとなる。チャンピオンの座を巡る争いはどのような形で決着を見せるのか。大いに注目を集めそうだ。

(文:島村元子 撮影:中村佳史)