SUPER GT 第5戦 鈴鹿 レポート&フォトギャラリー

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SUPER GT 第5戦 鈴鹿、#16 ARTA MUGEN NSX-GTが悲願の初優勝

<GT500>
8月26、27日、三重・鈴鹿サーキットにおいて、SUPER GT第5戦が実施され、予選でポールポジションを獲得した#16 ARTA MUGEN NSX-GT(福住仁嶺/大津弘樹)が荒れたレースをものともせず、独走態勢で完勝を遂げた。今シーズン、新体制で臨んだ戦いで初めての勝利となっている。

厳しい残暑が続く今夏。レースウィークを迎えた鈴鹿は、日中の気温は32度とはいえ、湿度が70%超の蒸し暑さとなり、ドライバーやチーム関係者はもちろん、観戦に訪れたファンにとっても”タフな”レースとなった。なお、1週間前に行なわれた全日本スーパーフォーミュラ選手権の決勝レース中に、多重クラッシュに巻き込まれた牧野任祐(#100 STANLEY NSX-GT)は、土曜日いっぱいドクターストップがかかっており、決勝のみ出走することを事前にチームが発表している。

予選日の朝に行なわれた公式練習でトップタイムをマークしたのは、#16 ARTA MUGEN NSX-GT(福住仁嶺/大津弘樹)。前回の富士でも速さを見せていたが、決勝ではピット作業違反のペナルティもあり、優勝を逃している。それゆえに是が非でも今大会で結果を残したいところ。午後からの予選に向けて、路面温度は50度超という厳しいコンディションとなったが、その中でも16号車が渾身のアタックを披露。Q2で福住が1分46秒385のトップタイムを叩き出し、自身2年ぶりのポールポジションを掴み取った。2番手には前回の第3戦鈴鹿の決勝で大クラッシュを喫した#23 MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ)が続き、改めて余りある底力をアピールする。また、アタックで3番手時計を#8 ARTA MUGEN NSX-GT(野尻智紀/大湯都史樹)がマークしたが、Q2を担当した大湯は、痛恨の4輪脱輪扱いとなり、タイム抹消に。代わって#17 Astemo NSX-GT(塚越広大/松下信治)が3番手に繰り上がっている。

予選日同様、灼熱の日差しが照りつけ、厳しい暑さに見舞われた鈴鹿。午後1時15分からのウォームアップ走行では、気温33度、路面温度49度のコンディション。前日より路面温度が気持ち低い感じではあったが、じりじりとした強い日差しの下、午後2時45分には77周、450kmの長くタフな戦いの火蓋が切って落とされる。

恒例の地元警察によるパレードラップを経て、レースがスタート。ポールの16号車は瞬く間に後続を引き離す走りを見せ、リードを築いていく。そんな中、レースは12周走行中にGT300クラス車両のタイヤが脱輪。これを受け、FCYの導入が決まる。この動きにいち早く反応したのが16号車。ためらいなくピットインし、ルーティンであるタイヤ交換および給油を行い、1回目の義務作業を消化する。この動きに6番手を走行していた#24 リアライズコーポレーション ADVAN Z(佐々木大樹/平手晃平)もピットに向かったが、こちらはFCY中のピット作業として違反扱いに。表彰台を狙って好走していた24号車だったが、このペナルティでピットストップ1分を科せられ、勝機を失うこととなった。

全車が29周終わりで1回目のピット作業を終えると、再びトップについたのは16号車。だが、2番手の23号車に続いたのは、現在のランキングトップである#3 Niterra MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)。実のところ、6周終了時にピットインするという”意表を突く”戦略を採ったことでポジションアップを果たしていた。だが、ライバルよりも早いタイミングでタイヤ交換していたこともあり、徐々にペースが遅れ始める。すると、後続にいたライバル達が次々と3号車を攻略。結果、3号車は39周終わりで2回目のピットインを行ない、代わって#39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/中山雄一)が3番手に浮上した。39号車は、他車とタイミングをずらしたピットインでタイヤ交換も行っており、現状の路面コンディションに見合うものを投入すると、この判断が奏功。予選12番手から大きくポジションを引き上げた。

レースは後半に入り、40周を過ぎたあたりかあ2回目のピットインが次々と始まる。44周終わりにピットに戻ったトップの16号車はドライバー交代も含む作業を51.7秒で終了。”裏のトップ”として23号車と39号車を従える形でさらに周回を重ねていくが、49周目にはGT300クラス車両の1台にタイヤトラブルが発生。130Rのアウト側のスポンジバリアにヒットし、停止するアクシデントとなった。結果、2度目のFCY導入となったが、16号車はすでに2位以下に対して大量リードを稼いでおり、トップの座は盤石の状態。逆に3番手を走る39号車は、その後方で激しくポジション争いを続ける3台との攻防戦に飲み込まれる形に。しかしながら、なんとか耐え凌ぎ、3位を死守する。この流れは最終盤になっても変わらず。結果、16号車が23号車に対して約10秒の大量リードを築いたまま、ゴール。待ちわびたシーズン初優勝を果たした。なお、2位でチェッカーを受けた23号車は、レース後の再車検において車両違反が発覚。正式結果で失格となった。これを受け、3位チェッカーの39号車が2位、そして死闘の末、予選11番手から4位をもぎ取った#14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太)が3位に繰り上がることとなった。

 

<GT300>
GT300では、FCYがより一層勝負の明暗を際立たせることとなった。予選で圧倒的な速さを見せてクラスポールポジションについたのは、#61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)。アタックを務めた山内は、今回のポール獲得が通算14回目に。単独でGT300クラス最多のポールシッターとなった。

61号車はレース開始直後から後続を大きく引き離す力走で圧倒的な強さをアピール。一方、ピットでの作業が可能となる5周目が終わると、続々とピットインを敢行するチームも数多く見られたが、自分たちのレースプランを貫き、16周終了時にピットへ戻って1回目のルーティンワークを完了。再び安定したペースで見えない敵との戦いを続けた。だが、全車が作業を終えた30周目には、#2 muta Racing GR86 GT(堤優威/平良響)がトップへ。61号車は4番手から周回を重ねることになった。

レースは45周目を走行中だった56 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R(ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ/名取鉄平)がバックストレートを走行中にタイヤトラブルに見舞われ、コースアウト。130Rのアウト側にあるスポンジバリアにヒットし、停止する。すぐに2回目のFCYが導入されたが、導入直前に2回目のピットインを敢行したのが#87 Bamboo Airways ランボルギーニ GT3(松浦孝亮/坂口夏月)と#18 UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/小出峻)の2台。さらに18号車はピットで87号車を先行し、クラストップに躍り出る。結果、61号車にとっては、思いもしないかたちで攻防戦のチャンスを逃してしまった。

レースは60周目に3度目のFCY導入が行なわれると、トップを走る18号車と2位の87号車はテール・トゥ・ノーズの状態へ。2台は1秒を切る攻防戦を長く続けたが、今シーズンから18号車のステアリングを握るルーキーの小出が奮闘。87号車のベテラン松浦のプレッシャーをものともせず、トップ死守の走りを見せた。一方の61号車は、怒涛の追い上げで3番手まで浮上。前2台を懸命に猛追したが、あと一歩及ばず。結果、18号車が予選16位から大逆転優勝を達成。2位87号車、3位61号車が揃って今季初表彰台に上がっている。

厳しい暑さやサクセスウェイトの影響を受けたチームもあれば、レース中のハプニングを味方につけて好成績を残すチームも現れるなど、波乱の展開となった第5戦鈴鹿。今シーズンの戦いも残り3戦、次回の舞台は杜の都仙台に位置するスポーツランドSUGOとなる。天候次第では、まだ暑さが残る可能性も高く、どのようなドラマを繰り広げるのか。9月16、17日の戦いは、チャンピオン争いを意識した重要な一戦になるだろう。

(文:島村元子 撮影:中村佳史)