SUPER GT 第6戦 SUGO レポート&フォトギャラリー

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SUPER GT第6戦、#8 ARTA MUGEN NSX-GTが待望の今季初勝利!

<GT500>
9月16、17日、宮城・スポーツランドSUGOにおいて、SUPER GT第6戦が行なわれた。決勝レースでは、ポールポジションからスタートした#8 ARTA MUGEN NSX-GT(野尻智紀/大湯都史樹)と、予選3位の#17 Astemo NSX-GT(塚越広大/松下信治)が、終盤に順位を入れ替えての攻防戦を展開。タイヤマネージメントやスピードで勝った17号車がトップチェッカーを受けて今シーズン初優勝を遂げたかに思われたが……。レース後の車両検査において、車両違反による不合格となり、失格に。結果、2位チェッカーの8号車が繰り上げ優勝を遂げている。

9月中旬のイベントながら、仙台にほど近いSUGOは蒸し暑い天気の中、開催されることになった。予選日の午前中に行なわれた公式練習では、前夜に降った雨の影響で路面はウエットコンディションだったが、段階的に改善されて最終的にはドライへ。ところが、午後2時40分からの予選を前に、再び雨が降り出す。幸い、短時間で雨は止んだが、GT300クラスのQ1・A組のセッション中はウエットタイヤでのアタックが強いられた。その後、路面も回復し、GT500クラスのQ1が始まると改めてドライタイヤでのアタックが可能となったが、不安定な天候の影響を受け、クルマのセットアップ、装着するタイヤ選択等でチームによっては明暗分かれるアタックセッションになったようだ。

公式練習でトップタイムをマークしていた#23 MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ)が、好調をキープしてQ1をトップ通過。これに前回の鈴鹿戦で2位となった#39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/中山雄一)、そして開幕戦から全レースで入賞している#17 Astemo NSX-GT(塚越広大/松下信治)がトップ3を形成する。一方、ポールポジションを確定するQ2では、残り2分を切ると続々と各車がベストタイムを塗り替えてトップに浮上。以後も目まぐるしく順位が入れ替わる中、17号車がSUGOのコースレコードを更新する1分09秒607をマークした。すると、残り30秒を切ってから23号車が更にタイムアップし、トップを奪取。だが、その直後に今度は8号車が1分09秒413を叩き出し、最後の最後にポールポジションをもぎ取ることとなった。2番手23号車とは0.073秒という僅差だった。なお、8号車でアタックを担当した大湯にとっては、自身初となるGT500クラスにおけるポールポジション獲得でもあった。

決勝日も蒸し暑い薄曇の天気となり、午後1時半からのパレードラップを前に、気温28度、路面温度33度を記録する。宮城県警の白バイとパトカーによるパレードラップ、そしてフォーメーションラップを経て、300km・84周の戦いが幕を開けた。逃げ切り先行を目指した8号車はぐんぐんと後続を引き離しにかかり、13周目には早くも10秒強の差を作り上げた。その前には全GT300車両をラップダウンにするなど、快進撃を続ける。逆に後続車はGT300車両が入り乱れ、ペースアップが難しい状況。これを嫌ってか、今回はレース3分の1を終えるタイミングを待っていたかのように、次々ルーティンのピット作業に取り掛かるチームが多く見られた。

そんな中、トップを走っていた8号車が32周終わりでピットイン。41.3秒の作業時間でコースへとクルマを送り出す。一方、2番手を走っていた23号車はひと足早い30周終わりでピットに戻ると、36.5秒のタイムで作業を終えていた。さらに、レース序盤、3番手にいた17号車は33周終わりで作業を行なうと、32.7秒という極めて短い時間で作業を完遂。チームスタッフの見事な仕事が結実し、17号車は8号車の前でコース復帰を果たすことになった。冷えたタイヤで懸命に”逃げる”17号車に対し、1周先にコースに戻った8号車が猛追。しかし、GT300車両に行く手を阻まれ、17号車の先行を許すことに。加えて、背後の23号車とは差を一気に縮められ、追う側から追われる方へと様相が変わってしまった。

レースは折返しを前に、大きなアクシデントが発生する。37周目の最終コーナーからメインストレートに向かっていた#100 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐)がイン側の走行ラインを取る中、そのアウト側にいたGT300車両がピットインのため、ラインを変更。その際、自身の右フロント部分が100号車後方部に接触し、高い速度でスピンしながらコースアウト側のガードレースにクラッシュしてしまう。自力での降車ができず、しばらくしてレスキューによって救出されたのは、山本選手。このままドクターヘリで搬送された。幸い命に別状はなかったが、後日、精密検査等で改めて入院をしたようだ。

なお、このアクシデントの直後、コース上にはセーフティカーが導入されたが、のちに赤旗が提示され、レースが中断。その後、午後3時20分にセーフティカー先導によって再開し、44周目にリスタートを迎えた。このあと52周までピットインを伸ばした暫定トップの39号車がうしろに下がると、晴れてトップに立ったのは、8号車。その直前に17号車攻略に成功していた。レース終盤に向かう中、一時は17号車との差も開いていた8号車だが、次第にタイヤのピックアップが厳しなり、逆に17号車に攻め立てられる。結果、76周目の最終コーナーで2台のラインが交錯、メインストレート上では17号車が先行し、再びトップを奪い取る。もはや、8号車に追い上げの余力はなく、逆に17号車は2位以下の差を大きく広げる走りを披露し、このままチェッカー。8号車は23号車の猛追をなんとか封じ込め、2位でフィニッシュラインをくぐって戦いを終えた。

見せどころ満載のトップ争いを繰り広げた17号車だったが、レース後に行なわれた再車検において、スキッドブロック厚み規定違反が判明。車検不合格となり、失格に。結果、8号車、23号車、さらには39号車が繰り上がりのトップ3となった。

 

<GT300>
予選でポールポジションを獲得したのは、#96 K-tunes RC F GT3(新田守男/高木真一)。前回第5戦鈴鹿で、#61 SUBARU BRZ R&D SPORTの山内英輝が最速タイムをマークし、GT300クラスにおけるポールポジション獲得最多記録で単独トップに立ったばかりだが、それまで山内と”タイ記録”保持者だった高木がQ2アタックで最速タイムを打ち出し、2018年の第2戦富士以来となる自身通算14回目のポールポジションを獲得。再び山内と”最多タイ記録”をシェアすることになった。

しかし、決勝レースでは、思うようにペースアップできず、予選2位の#20 シェイドレーシング GR86 GT(平中克幸/清水英志郎)に差を詰められ、序盤から激しい攻防戦を繰り返した。結果、上位2台に留まらず、その後方車両も縦一列になっての大接戦状態に。結果、20周目に20号車が96号車を攻略。その後方でも、#52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰)、#56 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R(ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ/名取鉄平)、61号車と順位が入れ替わる。だが、その中で、52号車がいち早くルーティン作業に着手。23周終わりでピットインし、ライバル勢とは異なる戦略を採る。

一方、暫定トップの20号車は31周を終えてピットイン。これで56号車がGT300クラスの先頭となり、そのうしろに#18 UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/小出峻)が続いた。迎えた35周目、56号車がピットインのため、最終コーナーを立ち上がり、メインストレートに向けてラインをイン側に寄せて行く中、さらにイン側を走行中だった#100 STANLEY NSX-GTに接触。100号車はスピンの末にガードレールにクラッシュしたが、56号車は接触により右フロントのボディパーツを破損したが、そのままピットで作業を進め、コース復帰を果たした。また、18号車もこのタイミングでピットイン。ルーティン作業を終えている。ともにセーフティカー導入直前のピット作業だったため、結果的にポジションアップに成功。”裏一位”の52号車に次ぐ、2番手、3番手につけることとなった。

だが、クラッシュを喫した100号車のアクシデントで、レースにはセーフティカーが導入され、のち赤旗提示で一時中断に。およそ45分後に再開に向けてGT300車両の送り出し作業が行なわれ、午後3時20分にセーフティカー先導によるリスタートが始まり、44周にグリーンフラッグとなった。

すると、その2分後には56号車に対するペナルティが次々と提示される。まず、100号車に対する危険なドライブ行為が、そして赤旗中断時に、コース上の車両に触ったことに対しては、「赤旗中の手順違反」となり、2回のドライブするーペナルティが科せられ、大きくポジションが後退した。これにより、残りの車両がルーティン作業を終えると、トップは52号車がキープ。後方の18号車との差を僅かながら広げにかかるが、18号車も諦めない。それでも逆転には至らないまま、いよいよ最終ラップを迎える。

最終ラップ、最終コーナーを立ち上がった52号車だが、チェッカーを目前に突如としてペースダウン。52号車をドライブする吉田が左右にクルマをゆすり、なんとかゴールを受けようと奮闘。あと少しでフィニッシュラインに到達するかどうかの瞬間、そのアウト側を18号車がスルリと走り抜け、僅差で真っ先にゴール。52号車は”息も絶え絶え”のような状態でなんとかフィニッシュはしたものの、もはや余力はなく、ストレート上でストップした。

大どんでん返しの劇的逆転を果たした18号車は、前大会に次ぐ2連勝達成かと思われたが、なんとレース後の再車検で最低地上高の違反が判明。結果、失格になってしまう。そして、一度は天国から地獄へと堕ちたと放心状態だった52号車の元に、シーズン初の優勝が戻ることになった。52号車はこの勝利でランキングでもトップへと浮上。ノーポイントで終わることになった18号車は10ポイント差でランキング2位になっている。一方、繰り上がりの結果で20号車が2位で続き、こちらはチーム結成後初の表彰台。3位には#6 DOBOT Audi R8 LMS(片山義章/ロベルト・メリ・ムンタン)が今シーズン2回目、第4戦富士に次ぐ2度目の3位を手にしている。

両クラスのトップチェッカーがそれぞれ車両違反で失格扱いという後味の悪い結果になったSUGO戦。両クラスとも最後まで手に汗握る攻防戦、ダイナミックなドラマを展開していただけに、車検による失格が発覚し、繰り上げ優勝になったのは残念なこと。今シーズンも残り2戦となる中、クリーンなバトルはもとより公平性に基づいた車両での”ガチ勝負”を見せてもらいたいものだ。

(文:島村元子 撮影:中村佳史)