スーパーフォーミュラ 第4戦 富士 レポート&フォトギャラリー

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第1回瑶子女王杯のSF第4戦、優勝は坪井 翔の手に

7月20、21日、静岡・富士スピードウェイにおいて開催された全日本スーパーフォーミュラ選手権第4戦。第1回瑶子女王杯として行われた今大会は、予選4位スタートの#36 坪井 翔(VANTELIN TEAM TOM’S)が強さ、速さを遺憾なく発揮し、逆転優勝を果たしている。

前回の第3戦SUGOは雨の影響を受けて赤旗終了という幕切れとなったが、東海地方が梅雨明けを迎えたこともあり、厳しい暑さのなかでのレース開催となった。その舞台、富士スピードウェイでは第4戦を前に、公式合同テストを実施。各ドライバー、チームともにそのデータをもとに準備を進め、戦いに臨むこととなった。

なお、今大会は「第1回瑶子女王杯 全日本スーパーフォーミュラ選手権 第4戦富士大会」として行われたため、レースウィークには瑶子女王殿下がお成りになり、記者会見や観戦に訪れた子どもたちとのご交流にも臨まれ、決勝後には賜杯を御下賜されている。

まず、朝のフリー走行においてトップタイムを刻んだのは、#5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELIION RACING)。第2戦オートポリスで達成した自身初勝利後、安定して上位での走りを見せており、今回もその片鱗を見せた。なお、今大会では前回SUGOに続き、ITOCHU ENEX TEAM IMPULから平良響が19号車をドライブ。SUGOの決勝は悪天候で存分に走れなかっただけに、今回はそのパフォーマンスをしかとアピールしたいところだろう。加えて、TGM Grand Prixでは、松下信治に代わって大津弘樹が55号車をドライブすることになった。

ノックアウト方式の予選は、午後2時にスタート。薄い灰色の雲がコース一面に広がるコンディションで、気温は32度、路面温度は48度。まず、Q1・A組では10台がコースインし、アタックを行なった。この組のトップ通過は、#15 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)。2番手には牧野が続くも、トップ岩佐との差は0.315秒と大きい。3番手は前回のSUGOで決勝前のウォームアップ走行中にバランスを崩してクラッシュを喫してレース欠場となった#64 山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)が続いた。

Q1・B組では、朝のフリー走行で2、3番手につけていたドライバーが速さを見せる。まず、#39 大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)がトップに立つも、その直後には#8 福住仁嶺(Kids com Team KCMG)がこれを上回ってトップ通過を果たした。

両組のQ1を通過した計12台によるQ2は7分間での勝負。天候は予選開始からほぼ変わっておらず、まずは6台がセッション開始とともにコースに向かい、ストレートを通過せずにピットへ。タイヤ交換や微調整を加えて、改めてコースに向かう。一方、ピットでしばし待機していた残る6台は、先にコースに出ていた各車が戻ってくるのを見計らったようにしてコースへと向かい、本格的なアタックが始まる。

チェッカーが近づくなか、残り1分半の時点でトップタイムを刻んだのは、坪井。しかし、そのうしろからフィニッシュラインを切る各車が坪井のタイムをどんどんと上回っていく。まずは岩佐が1分22秒560をマークして、トップへ。一方、ポイントランキングトップの#16 野尻智紀(TEAM MUGEN)や牧野がチェッカーを受けるも、岩佐を上回れない。このまま岩佐が第2戦以来のポールを手にするかに思われたが、Q1・B組でトップにつけた福住が1分22秒543をマーク。岩佐とは0.017秒の僅差ながらポールポジションをもぎ取ることに成功した。これにより、福住は2021年第2戦鈴鹿大会以来、自身2度目のポールポジションを手にすることに。また、所属するKCMGに、チーム初のポールをもたらす結果となった。

 

翌日の決勝日も厳しい暑さに見舞われた富士。しかし、両日で4万9千人を超える観客が訪れ、会場は熱気に包まれた。午後3時の決勝を前に全21台のクルマがダミーグリッドに整列。いよいよ41周に渡る戦いが幕を開けると思われたが、その直前になって予選5番手の#6 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELIION RACING)のクルマがピットへと押し戻される。発電系のトラブルの結果、惜しくも出走は果たせなかった。

レースは、ポールポジションから福住が好スタート。一方のフロントロウである岩佐は蹴り出しで出遅れ、大きく後退。代わって予選3番手の#39 大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)が2番手に上がり、さらに牧野、野尻が、そしてこの背後に坪井がつけた。

上位陣のなかで真っ先にルーティンのピットインに向かったのは、野尻。10周終わりにピットインし、逆転をかけてライバルを揺さぶる。一方、14周終了時にピットへ向かったのは福住。ところが左フロントタイヤの交換に時間がかかり、ポジションを落とす形でレースに復帰した。着実に築いてきた後続との差がすべて水泡に帰した福住だったが、その後も果敢に攻め続け、失ったポジションをひとつ、またひとつ取り返す走りを見せることで、最終的には4位で戦いを終えている。

レースは折り返しを前にまだ6台がピットインをせずに周回。そのなかで優勝争いに絡む坪井は28周を終えてピットインしたが、文句なしのピット作業でコースに復帰し、4番手から前を追う。さらにタイヤが温まると、逆転また逆転という圧巻の走りで瞬く間にピットイン終了組での2番手へと浮上。32周目には前を行く大湯との一騎打ちを制し、ついに”裏のトップ”へと上り詰めた。

レースは39周終了時に最後の1台がピットイン。これで正式にトップとなった坪井は、なおも速いペースで後続を引き離し、2位に7秒強の差をつけて41周を走破。待望だった今シーズンの初優勝を飾った。なお坪井にとっては、2020年第3戦富士以来、通算3勝目。また、チーム移籍後初となる勝利でもあった。2位大湯も今季初表彰台、3位には予選から大きくポジションアップを遂げた野尻が続き、依然としてシリーズポイントで暫定トップの座を死守している。

 

シーズン後半戦となる次回の第5戦は、栃木・モビリティリゾートにおいて8月24、25日に開催。引き続き、厳しい暑さとの戦いにもなりそうだ。

 

(文:島村元子 撮影:中村佳史)