スーパーフォーミュラ 第5戦 もてぎ レポート&フォトギャラリー

スーパーフォーミュラ 第5戦 もてぎ レポート&フォトギャラリー

後半戦に入ったSF第5戦、牧野が今季2勝目をマーク!

8月24、25日に栃木・モビリティリゾートもてぎで全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦が開催された。5番手スタートの#5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が37周のレースを制して優勝を果たした。

梅雨明け後、厳しい暑さが続く日本列島だが、一方で不安定な大気の影響を受けて天候が急変するなど落ち着かないコンディションに見舞われることも少なくない。8月も後半戦に入るなか、戦いの舞台となるモビリティリゾートもてぎは、予選日から落ち着かない天候となった。

まず、朝のフリー走行は薄曇りのなかでスタート。このセッションをトップで終えたのは、#3 山下健太(KONDO RACING)。7月上旬に富士スピードウェイで実施された公式テストで総合トップタイムをマークしていることもあり、その流れを継続する形で予選に向けて弾みをつけた。これに#65 佐藤 蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)とチームメイトの#64 山本尚貴が続く結果となった。

午後2時45分にスタートしたノックアウト予選。午後から天気が下り坂となり雨の予報もあったが、幸いにしてセッション中に雨が降り出すことはなく、気温35度、路面温度46度という蒸し暑くタフなコンディションのなかでのアタック合戦を迎える。

まず、2組に分かれて実施するQ1でトップ通過を果たしたのは、A組が#6 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)で、B組は太田のチームメイトである#5 牧野任祐。チーム総合力で速さをアピールする形となった。なお、今大会からITOCHU ENEX TEAM IMPULの19号車をドライブすることになった、注目ドライバーのニック・デ・フリース。ぶっつけ本番ともいえるもてぎの予選に臨んだが、残念ながらQ1どまり。決勝は18番手の後方から抜きどころが少ないと言われるもてぎをどのように攻略するのか、気になるところだ。また、シリーズランキングで暫定4番手につけるルーキーの#15 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)もQ1・A組7番手にとどまり、敗退。Q2進出可能の6番手とは僅か1000分の2秒だった。

続くQ2には12台が進出。大半の車両がニュータイヤを装着し、コースインのタイミングを伺うなか、太田だけがユーズドタイヤでチェックラップを敢行。ピットに戻るとすぐニュータイヤへと交換し、コースに向かった。さらに、前回第4戦でポールポジションを手にした#8 福住仁嶺(Kids com Team KCMG)は、ニュータイヤを装着し、そのままピット前で待機。残り3分強の時点でようやくコースに向かうと、アウトラップからそのままアタックを開始した。

結果、真っ先にアタックラップのチェッカーを受けることとなり、1分32秒379がライバルのターゲットタイムになった。その後、次々とチェッカーを受ける各車。1台、また1台と福住のタイムを上回ったため、最終的に福住は10番手に留まっている。一方、予選トップタイムを刻むドライバーは次々と更新され、まず、#16 野尻智紀(TEAM MUGEN)が1分32秒597を、さらに#39 大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)が1分32秒091で最速タイムを刻んだが、その後にチェッカーを受けた山下が1分31秒995をマークしてトップを奪取。最後の最後にアタックを終えた太田も奮闘して1分32秒074と好タイムをマークしたが、山下には0.079秒及ばず2番手となった。

なお、山下のポールポジション獲得は2017年第4戦以来。このときと同じもてぎでのポール獲得に、喜びもひとしおという感じだった。

 

翌日、決勝を迎えるもてぎは薄曇り。雨の予報もあったが幸いにしてレース中は降雨もなく、シングルシーターならではのヒリヒリするような攻防戦が多く見られた。

午後2時40分、37周にわたる戦いが号砲。ポールスタートの山下、そして予選2位の太田がキチンとスタートを決めたが、予選4番手の野尻はやや出遅れる。一方、その後方にいた牧野が好スタートでポジションアップに成功。オープニングラップで3番手へ浮上した。付かず離れずの展開を経て、ルーティンのピットインが可能となる10周を迎えると、現状打破を狙って太田が勝負に出る。真っ先にピットへと飛び込み、6.3秒の早いピット作業でコースに復帰。逆にトップ争いの山下、牧野、そして野尻は互いを牽制する形でその後も周回を重ねた。

そのなかで先に動きを見せたのが、牧野。自身のペースが山下より速かったため、このまま周回を重ねるとピット作業を終えた太田との差も開いてしまうことを懸念したのか、レース折り返しを過ぎた22周終わりでピットにクルマを戻した。先の作業同様に、待ち構えたスタッフは牧野を6.1秒でコースへと送り出す。一方、これを見て、何度もピットインのタイミングを伺っていた山下も動き、その翌周にピットへ。すると、後方の野尻もこれに続いた。

山下は6.6秒の作業タイムでピットを離れたが、太田と牧野だけでなく、さらには予選3番手ながらスタートで牧野に先行を許した大湯の後ろでコースに復帰。追い上げを強いられた。そんななか、25周の2コーナー立ち上がりで大湯とのサイド・バイ・サイドに挑むとラインをクロスさせながら、長きにわたってバトルを展開し、逆転に成功。その後は牧野との差を縮めるべく猛プッシュするも、その差は7秒超へと広がった。

一方のトップ争いは、終盤に向かうなかで2台の距離が次第に縮まる。4秒ほどあった差が、34周目にはわずか0.4秒強となり、完全にテール・トゥ・ノーズ状態。さらに35周目を迎えると、双方がOTS(オーバーテイクシステム)をめいっぱい活用し、死闘ともいえる攻防戦を繰り広げた。ときには牧野が太田を先行するも、メインストレートを通過するときには太田がトップを死守。勝負の行方はファイナルラップまで持ち越されるかに思われた。

だが、チェッカーまで残り1周を残し、まさかの事態が発生する。なんとセカンド・アンダーブリッジ手前で太田がスピン! と同時にスロットルが壊れたという太田の声が無線で響いた。なお、背後にいた牧野は間一髪で衝突を回避。思わぬ形でトップを奪取することになったが、ブレることなくこのまま最後まで走り切り、トップチェッカー。今シーズン2勝目を果たしている。最後まで好バトルを繰り広げたチームメイトを慮ってか、クルマを降りて静かに勝利の喜びを噛み締めていた牧野の姿が印象的だった。

大終盤で起こった出来事を受け、結果的に2位を獲得したのは山下。開幕戦に続き、シーズン2度目の2位表彰台となった。そして、3位には野尻。手堅く表彰台の一角を手にしている。今回の結果を受け、シリーズポイントトップは野尻と変わらず。2位に牧野が浮上し、これに5位でレースを終えた#36 坪井 翔(VANTELIN TEAM TOM’S)が3番手につけている。

 

次回は富士スピードウェイでの開催。1大会で2レースを開催する。

 

(文:島村元子 撮影:中村佳史)