第5”最終戦”鈴鹿、”王者”au TOM’S GR Supraがポール・トゥ・ウィンで締めくくる
<GT500>
12月7、8日、三重・鈴鹿サーキットにおいて、SUPER GT第5戦「SUZUKA 300km RACE GRAND FINAL」が行なわれ、前日の予選でポールポジションを獲得し、決勝を待たずにタイトルを手にしていた#36 au TOM’S GR Supra(坪井翔/山下健太)が、シーズン中の勢いそのままに、強さ、速さを発揮してトップチェッカー。シーズン3勝目を挙げて、”有終の美”を飾った。
冬到来のなか、迎えた第5戦”最終戦”。予選日は、やや風は冷たいものの日中穏やかな日差しにも恵まれた。午前中こそ気温、路面温度揃って低かったが、午後1時50分からの予選を迎えるころには、気温14度、路面温度は24度まで上昇した。
時期的なコンディションを考慮し、今大会では通常とは逆にGT500からセッションをスタート。また時間も5分追加という形で進められた。まず、Q1でトップタイムをマークしたのは、#24 リアライズコーポレーション ADVAN Z(松田次生/名取鉄平)。午前中はなかなか温まらないタイヤに苦戦し、コースアウトする姿も見られたが、この予選でも挙動を乱すなど落ち着かない。だが、終盤にかけて各車がベストラップを刻むなか、最後に24号車が1分43秒670をマークし、Q1でのトップタイムを奪う結果となった。
GT300クラスQ1を挟み、GT500クラスQ2は午後2時48分から。気温は変わらずとも、路面温度はQ1より3度下がった状態に。与えられた時間は15分ながら、ほぼ残り10分になるまでピットからの動きは見られなかった。まさにワンラップアタックに臨んだ各車だが、ここでランキング2位からの逆転勝利を目指す#100 STANLEY CIVIC TYPE R-GT(山本尚貴/牧野任祐)がトップタイムをマークすると、これを境にして、次々に最速タイムが更新される。結果、#14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/福住仁嶺)、#17 Astemo CIVIC TYPE R-GT(塚越広大/太田格之進)、そして36号車がQ2でのトップ3となった。これを受け、Q1、Q2合算タイムにより、ポールポジションを手にしたのは36号車。17号車が2番手、14号車が3番手に続いた。なお、セッション中、14号車は後続車の走行を妨害したとするペナルティが課せられたため、5グリッド降格に。予選結果はそのままに、翌日の決勝では、8位からのスタートを強いられた。
ポイントで大量リードしてランキングトップに立っていた36号車は、開幕戦以来となるポールポジションを獲得。3点が加点され、決勝を待たずしてシリーズチャンピオンが決定することに。坪井としては2連覇の王座となり、通算3度目のチャンピオン。先に最終戦を終えた全日本スーパーフォーミュラでもチャンピオンとなった坪井は、ダブルタイトル獲得を果たしたことになる。また山下にとっても2019年以来、2度目の戴冠だった。
翌日の決勝日は、さらに寒さが厳しくなる。曇り空が先行し、日差しも弱くなり、気温もさほど上昇せず。午後12時50分に三重県警の白バイとパトカーによるパレードラップが始まるタイミングで、気温は13度、路面温度は19度という難しいコンディションだった。
フォーメーションラップが予定より1周増えたことを受け、レースは予定の52周から1周減算の51周の戦いに。ポールスタートの36号車がクリアラップを取ってスタートする一方、スタートグリッドで3番手となった#24 リアライズコーポレーション ADVAN Z(松田次生/名取鉄平)はタイヤの温まりが遅く、ズルズルと後退。17号車、100号車が36号車を追う形になった。
レースは早くも9周目にアクシデントが発生。なんと17号車がGT300クラス車両と接触、これでFCYが導入される。リスタートを機に、トップ36号車はさらに後続との差を広げることになったが、17号車はポジションを落とし、代わって100号車、#16 ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #16(大津弘樹/佐藤蓮)が続いた。そんななか迎えたルーティンのピットイン。今回はどのチームも早めの動きを見せ、ミニマムでの周回数である17周が終わると、2位を走る100号車を筆頭に6台がピットへ。翌周には36号車を含む上位陣が続き、最終的には20周終了をもって、全15台が作業を終える。
第2スティントでの戦いを迎えるなか、後半の30周目にGT300車両がコースアウトし、ストップ。2度目のFCY導入となる。この時点で、ハイペースでトップ36号車を猛追していた#3 Niterra MOTUL Z(高星明誠/三宅淳詞)だったが、リスタート時に痛恨のスピン! 表彰台獲得が水泡に帰す。一旦序盤にポジションを落とした17号車だったが、その後はペース良く、見せ場を作って逆転に成功。再び 2位で周回を重ねていく。逆に3位を死守したい100号車だったが最後尾スタートから着実にポジションアップを果たし、要所要所で勝負強さを見せてきた#12 MARELLI IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット)が猛追。ついに42周目のシケインでポジションが逆転した。
レースはその後、2番手の17号車が激しく36号車を追い立てたが、直接のバトルまでには及ばず。36号車がトップチェッカーを受けて今シーズン3勝目を達成。シリーズタイトル獲得に自ら華を添える結果となった。17号車はシーズンチームベストの2位でフィニッシュ、3位を掴み取った12号車は、カルソニック時代からチームを長らくスポンサードした現・マレリのカラーリングでのラストレースを表彰台で終えている。
シリーズランキングはトップ36号車に続き、今シーズンから新たに投入されたCIVIC勢トップの100号車が2位、3位がブリヂストンタイヤ1年目のなかで奮闘した#3 Niterra MOTUL Z(高星明誠/三宅淳詞)という結果となった。
<GT300>
GT500クラスに続いての予選となったGT300クラス。25分間のQ1は全車出走してのタイムアタックだったが、チーム戦略かコースインするタイミングがチームによって大きくばらつくこととなった。午前中の公式練習でクラストップにつけた#61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)だったが、こちらは3番手に。一方、ランキング暫定トップの#65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗)は”無難に”9番手につけた。一方、逆転を目論む#88 VENTENY Lamborghini GT3(小暮卓史/元嶋佑弥)がトップタイムをマーク。同様にまだチャンピオンの可能性を残す#2 muta Racing GR86 GT(堤優威/平良響)も4番手につけ、65号車にプレッシャーをかけた。
続くQ2では、Q1での上位14台によるクラスポールポジション争いを展開。すでに路面温度が16度まで下がる難しいコンディションのなか、まずは61号車が最速タイムをマークするが、100分の9秒差で88号車がこれを上回る。しかし、最後にアタックラップを決めたのは、#56 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R(佐々木大樹/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)。合算タイムでは総合5番手スタートとなったが、コースレコードを更新する走りを披露した。そして、クラスポールポジションを手にしたのは、88号車。貴重な3点を計上。予選10番手からスタートする65号車とのポイント差を8点に縮めた。また、2号車の3位につけ、ともに逆転をかけて決勝に挑むことになった。
決勝では、クラスポールの88号車が瞬く間に後続との差を広げるも、FCY導入でマージンを消失。一方、65号車は最短周回数の15周終わりでルーティンのピットインを敢行。当然ながらタイヤ無交換で第2スティントに向かった。これを受け、88号車は18周終了の時点でピットイン。リヤタイヤ2本のみを交換する予定どおりの戦略でコース復帰を果たした。
後半に入ると、88号車がじわじわとポジションアップし、34周目には2位まで復帰。今季まだ優勝のない2号車がトップを死守していたが、タイヤ無交換でのタフな戦いを続ける2号車とペースが明らかに異なる。結果、38周目のメインストレートで逆転を果たし、トップを奪還する。一方、65号車はこの時点で4位を走行。優勝に必要な条件は2位以上だったが、逃げる88号車に対して65号車はなす術もなく、そのままの順位に甘んじてチェッカー。トップでレースを締めくくった88号車はシーズン4勝という大躍進の末、チーム初となるクラスチャンピオン獲得をやってのけた。また、JLOCチームとしては、レース参戦から30年目という節目で掴み取った初戴冠となっている。
レースは2号車が意地を見せて2位チェッカー、3位には#31 apr LC500h GT(小高一斗/中村仁)が続いた。なお、ランキングは88号車に続き、65号車、そして2号車となっている。
スケジュール変更を余儀なくされ、12月まで戦いの行方が先延ばしとなった今シーズンのSUPER GT。来シーズンは4月中旬の岡山大会を皮切りに、コロナ禍で長らく開催が見送られてきた海外戦が復帰。マレーシア・セパン戦が6月下旬に予定されている。年間8戦で繰り広げられる戦いは、ますます白熱しそうだ。
フォトギャラリー
(文:島村元子 撮影:中村佳史)