SF第2戦、牧野任祐が悲願のSF初勝利!
5月18、19日、全日本スーパーフォーミュラ選手権第2戦が、大分・オートポリスで開催され、予選2番手から好スタートを切った#5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がトップを奪取すると、そのまま理想的なレースを展開。独走で待望のトップフォーミュラ初勝利を達成した。
今年のスーパーフォーミュラは、国際レースの日本大会が3月下旬から4月初旬に開催された影響を受け、スケジュールの変更が余儀なくされたこともあり、第2戦の開催は開幕戦から2ヶ月強というインターバルが取られた。迎える舞台は九州にあるオートポリス。アップダウンに富み、特徴あるコースレイアウトを持つ一方、路面のミューが高くタイヤへの負荷がかかりやすいことでも知られる。レースウィーク中にタイヤとマシンセッティングの相性を見極めることが重要視されるが、予選を前にしたフリー走行から安定した速さを見せていたのが#15 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)。”今、もっともF1に近い日本人ドライバー”と言われる岩佐は、スーパーフォーミュラに今シーズンデビュー。鳴り物入りで挑んだ開幕戦の鈴鹿では予選、決勝ともにトップ3入りを果たせず、見せ場がなかった。だが、このインターバルを味方にしたか、フリー走行でトップに立った牧野に続いて僅差の2番手となり、予選に向けての弾みをつけた。
好天気のなかで行なわれたノックアウト予選。まず、Q1・A組に出走した選手の中でトップタイムをマークしたのは、牧野のチームメイトであり、開幕戦鈴鹿の予選で2番手を手にした#6 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。これに岩佐、#8 福住仁嶺(Kids com Team KCMG)が続いた。なお、開幕戦でITOCHU ENEX TEAM IMPULの19号車を駆ったテオ・プルシェールだが、インディカーシリーズへの参戦が決定したため、今大会を欠場。急遽、イギリス人ドライバーのベン・バーニコートが招集されたが、惜しくもQ1突破はならなかかった。
続くQ1・B組には、先の鈴鹿で勝利した#16 野尻智紀(TEAM MUGEN)や牧野が出走。10分間のアタックを終えてチェッカーフラッグが振られるなか、まずは野尻がトップタイムをマークするも、これを牧野が上回り、トップ通過を果たす。さらに、朝のフリー走行ではタイムが伸びなかった#38 阪口晴南 (VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)が2番手タイムをマークし、野尻は3番手でQ1通過を果たした。
迎えたQ2には全12台が出走。7分間のアタックセッションで真っ先にアタックラップを行なったのが、岩佐。各セクターで最速タイムを刻みつつ、1分26秒632という申し分のないタイムでチェッカーを受けると、このあと、牧野が続くが岩佐のタイムから0.338秒遅れで2番手に。さらに続々と後続車もフィニッシュラインをくぐったが、誰一人として岩佐のタイムを上回ることはできず。結果、岩佐が参戦2戦目にして自身初のポールポジションを獲得。2番手に牧野、3番手には鈴鹿で復活の3位獲得を果たした#64 山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)が続き、トップ3をホンダエンジン車が独占。トヨタ勢トップは4番手の阪口という結果になった。
連日、晴天に恵まれたオートポリス。決勝は午後2時50分に号砲となる。やや強い風が吹くコンディションで、気温は24度、路面温度は38度という絶好の観戦日和のなか、41周に渡る戦いが幕を開けた。
蹴り出しがやや鈍ったか、ポールの岩佐がスタートで出遅れ、その隣の牧野にトップを奪われる。さらに予選3番手の山本が牧野に続き、岩佐は3番手から周回を重ねることになる。レースウィークに入ってからつねに快調の牧野は決勝でも速さを見せ手、後続との差をぐんぐんと広げる走りを披露。山本もこれに食らいつきた方が、岩佐の猛追に遭って自身のレースを組み立てることが難しい状態に。変化をもたせようとしたか、ピット作業が可能となる10周終わりでいち早くピットへとクルマを戻し、ルーティン作業を終えてコースに復帰した。
2番手の岩佐は牧野との差を縮めようとするが、牧野との差は広がるばかり。レース折り返しの20周時点で3秒強という大差がついていた。迎えた24周目、トップ牧野がピットへ。すると、岩佐もこれに続き、ピット作業での逆転に賭けた。しかしながら、牧野は6.8秒で作業を終えて順調にコースへと復帰。対する岩佐もノートラブルでピットを離れたが、コース復帰時には、先に作業を終えていた山本、さらには#6 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)の先行を許すこととなり、実質4番手からの追い上げを強いられる。
レース後半になっても牧野の快走は変わらず。逆に岩佐は目前のライバルたちを逆転すべく、まずは27周目に太田を2コーナーから3コーナーにかけて逆転し、さらに山本をロックオン。34周目の1コーナーで山本を料理し、再び2番手の座に復帰した。しかし、その背後には、同じ周の100Rで山本を逆転した#36 坪井 翔(VANTELIN TEAM TOM’S)が。岩佐よりも遅れてピット作業を行なった坪井は、ハイペースで岩佐とのタイム差を周回ごとに縮める走りを見せ、プレッシャーをかけ続けた。
チェッカーが近づくなか、十分なマージンを築いた牧野はレースをコントロール。ペースアップして僅かな望みに賭ける岩佐の野望を打ち砕いた。理想的なレース展開のまま、牧野はトップでチェッカー。2019年にスーパーフォーミュラへとデビューした牧野。開幕戦でいきなりポールポジションを獲得したが、優勝にはあと一歩届かない戦いが続いていた。今回、ようやく悲願の初優勝を果たし、うれし涙を流した。2位には岩佐、そして3位にはトヨタ勢トップとなる坪井が続いている。
続く第3戦の開催は6月22、23日に開催予定。東北、宮城へと舞台を移し、スポーツランドSUGOにおいて熱い戦いが繰り広げられる。
(文:島村元子 撮影:中村佳史)