スーパーフォーミュラ 第6・7戦 富士 レポート&フォトギャラリー

スーパーフォーミュラ 第6・7戦 富士 レポート&フォトギャラリー

ワンデーレース開催の富士。初日は坪井が今季2勝目を挙げる

10月12日、静岡・富士スピードウェイにおいて全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦の予選と決勝が開催された。そのなかで、予選7位からスタートを切った#36 坪井 翔(VANTELIN TEAM TOM’S)が巧みなレース運びを味方にし、シーズン2勝目を挙げている。

いよいよ今シーズンも残り2大会となった2024年のスーパーフォーミュラ。シーズン2度目となる富士スピードウェイでの戦いは、レースウィークの土曜、そして日曜それぞれに予選と決勝を行なう”ワンデーレース”フォーマットでの開催となる。一方、8月下旬に開催された第5戦からおよそ1ヶ月半という長いインターバルを挟んでの戦いのため、いち早く流れを味方につけて決勝を戦いところだ。

ワンデーレースでの開催にあたり、金曜日には1時間30分にわたる公式練習が行われ、#65 佐藤 蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)がトップタイムをマーク。これに僅差で#15 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)、#8 福住仁嶺(Kids com Team KCMG)がトップ3に。なかでも岩佐、福住とも今シーズンはポールポジションを手にしながらもいまだ優勝を果たしていないだけに、これを弾みに予選へと期待を膨らませたはずだ。

10月に入り、すっかり天候も秋らしくなり、富士スピードウェイでは秋晴れの下で予選が行われた。すっきりと青空が拡がるなか、午前9時にセッションスタート。21台の参戦車両が2組に分かれ、各10分ごとの予選をQ1として実施した。大きな大番狂わせはなかったものの、前戦で2位表彰台を手にした#3 山下健太(KONDO RACING)やスポット参戦で話題を集めている#19 ニック・デ・フリース(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)らがQ2に駒を進めるには至らなかった。

Q2は、Q1を突破した全12台によるアタック。7分間のセッションが始まると、つねにトップタイムを刻んでいた福住がそのままアタックラップでも最速タイムをマーク。真っ先に1分21秒台にタイムを入れた岩佐を、まず僚友の#16 野尻智紀(TEAM MUGEN)が逆転。このあとチェッカーを受けた福住が1分21秒726のタイムでトップに躍り出た。その後、続々とチェッカーを受けるも福住のタイムを上回るドライバーが現れず。ただ、ラストアタッカーの#6 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が福住と野尻の間に割って入り、2番手を確定している。その一方で、野尻とシリーズ争い中の#5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)は9番手に留まった。

 

予選からおよそ5時間後。午後2時50分、41周にわたる決勝レースの幕が上がる。気温23度、路面温度32度、メインストレートに強い向かい風が吹くなか、まず好スタートを見せたのは予選4番手の岩佐だった。逆にフロントローの福住と太田は出遅れ、野尻や予選6番手の佐藤、そして坪井にも先行を許すこととなった。

岩佐を追う野尻は早速2周目の1コーナーで迫ると、その先のコカ・コーラでは岩佐が痛恨のオーバーラン。これで野尻がトップに立つ。すると、後ろの坪井も岩佐を料理。2番手で野尻を追いかけた。早々に”プラン変更”を迫られた岩佐は、ピットインが可能となる10周終了時にルーティンワークを敢行。これに続き、他の4台もピットに向かった。すると、その翌周には#7 小林可夢偉(Kids com Team KCMG)ら2台がピットイン。なかでも小林は絶妙なタイミングでコース復帰を果たし、さらに中盤以降のレースペースが他車より秀でたパフォーマンスが奏効し、表彰台を視野に入れた戦いを披露することになる。

一方、トップ野尻そして坪井がピットインを実施したのは、21周終了と23周終了時。野尻がコースに復帰すると、岩佐、太田、小林のうしろでコースに復帰。だが、あとからピット作業を行なった坪井は、野尻の前でコース復帰に成功。野尻はタイヤが存分に温まっていない坪井を懸命に追い立てるも、逆転には至らず。結果、野尻はポジションを下げてライバルを追うことを強いられた。

レースは終盤に向かうなか、坪井がトップ岩佐にじわじわと詰め寄り、逆転の機会を伺う。一時、2秒5ほどあった差を縮めて31周目の1コーナーに向けて激しい攻防戦を展開。一瞬、坪井が前に出るも岩佐がブレーキングでトップをキープ。しかし諦めない坪井が100Rで勝負に出て逆転に成功した。また32周目には小林が太田を、さらに牧野が野尻をそれぞれ攻略。それぞれポジションを入れ替えた。中でもチャンピオン争いで野尻を追う牧野は、太田をも逆転。太田はその後、野尻にも逆転を許し、さらにはその背後で様子を伺っていた福住にも先行されてしまった。また、福住は最終ラップでも野尻を逆転。最終的に5位で戦いを終えている。

岩佐を逆転した坪井はその後も安定した速さでレースを牽引。終盤に向けて差を広げるとそのままトップチェッカー。前大会の富士に続き、シーズン2勝目を達成。シリーズランキングでもトップ野尻に0.5点差に迫ることになった。2位には岩佐。今シーズン3度目の2位となり、またしても勝利を逃している。3位に続いたのは小林。2019年第5戦もてぎ以来となるうれしい表彰台となった。

 

 

連日のワンデーレース。第7戦の覇者も坪井翔!

10月13日、静岡・富士スピードウェイにおいて全日本スーパーフォーミュラ選手権第7戦が行われた。前日に続き、ワンデーレースフォーマットでの一戦では、ポールポジションスタートの#36 坪井 翔(VANTELIN TEAM TOM’S)が手堅いレース運びを見せてトップチェッカー。シリーズランキングでもトップに躍り出ることとなった。

シーズン終盤、今大会富士と続く鈴鹿サーキットにおいてワンデーレースフォーマットでの戦いを繰り広げることになった今年のスーパーフォーミュラ。予選から決勝まで短期決戦で戦いを展開することとなり、いっそう緊張感高まるレースを繰り広げている。第7戦を迎えた富士は、前日に続いて秋晴れのレース日和に恵まれ、午前9時からの予選から多くのファンが僅差でのタイムアタックに見入っていた。
まず、Q1・A組には前日の第6戦でポールポジションを掴んだ#8 福住仁嶺(Kids com Team KCMG)や、勝者の坪井が出走。シーズン2勝目を挙げた坪井がその流れを味方にして、好タイムをマーク。まずこの組のトップに立ってQ2進出を決めた。

Q1・B組には、昨日のレースで最後にポジションを落とし、シリーズ争いではランキング2位に浮上した坪井へわずか0.5点差に迫られた#16 野尻智紀(TEAM MUGEN)、5年ぶりの表彰台に上がった#7 小林可夢偉(Kids com Team KCMG)らが出走。セッションでは、まずランキング3位の#5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がトップタイムをマーク。これにわずか野尻が1000分の2秒差で2位に続き、#64 山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)とともにこの組のトップ3入りを果たした。

7分間のQ2に挑んだ全12台。真っ先に無限の野尻、岩佐の2台がスタート開始とともにコースへと向かう。これに好調のKCMGの小林と福住が続き、残り時間2分を切った時点で各車がアタックラップへと向かっていく。まず、ターゲットタイムをマークしたのは小林。しかし、1分22秒後半のタイムであったため、まだこのあとのドライバーがタイムを更新すると思われた。そんななか、チェッカー5秒前に福住が1分22秒218で暫定トップに立つ。その後各車が次々とチェッカーを受け、野尻が1分22秒152をマークしてトップを奪取。このままポジション確定かと思われたが、ラストアタックに挑んでいた坪井が唯一の21秒台となる1分21秒880の好タイムをマーク。これでポールポジションが確定することになった。坪井にとっては、シーズン初のポール。これにより、ポイント争いで3点を計上し、予選2位獲得で2点を加点した野尻に対してランキングで0.5点リードする形で決勝に挑むこととなった。

 

前日同様、午後2時50分、41周にわたる第7戦の戦いが号砲。気温25度、路面温度35度と前日よりはやや暑さを感じるなか、ポールの坪井はクリアスタートを決めたが、予選2番手の野尻は坪井を攻め立てることに気を取られたか、予選4番手の牧野に先行を許してしまう。一方、3周目にはダンロップコーナーで複数台が絡む接触アクシデントが発生。セーフティカーが6周終了まで導入された。7周目の再スタートに向けて坪井は思い切りペースダウンし、後続車両を牽制。うまく後続車との差をつけてレースを再開させる。だが、3番手を走る野尻は、勢いある福住さらには佐藤にも先行を許し、ポジションを落としてしまった。この現状を打破しようとしたか、野尻は10周終了時にピットイン。また、これに先んじて牧野もピットインを選択している。一方、2番手を走る福住はその2周後にピットを目指した。

そんななか、レースは12周目に2台が接触するアクシデントが発生。車両がコースサイドにストップしたため、2回目のセーフティカーが導入される。これを好機としたのが、トップ坪井を含む8台。スピーディにピット作業を済ませた坪井は、コース復帰後もトップをキープ。これに福住が続いたが、坪井と同じ周にピットインしてコース復帰を果たした佐藤が、メインストレートを駆け抜けてきた牧野と軽く接触。ともにクルマへのダメージはなかったが、走行ラインの優先権を巡り、ペナルティを回避するために前に出ていた牧野は一旦佐藤にポジションを譲り、周回を重ねる選択を採った。なお、のちに審議対象となったこのアクシデントに対し、レース後には佐藤へのタイム加算ペナルティを発表。さらに再車検で佐藤のクルマは最低重量違反となり、レース失格の扱いとなっている。

レースは16周終了時に再開。その後、佐藤との差を削る走りを見せた牧野は、22周目のコカ・コーラで佐藤を攻略。3番手から前2台を追う展開に挑むことになった。また、福住は再三に渡りトップ坪井に迫るが、逆転するまでには至らず。終盤に向けてトップ3は膠着状態のなかでの周回が続いた。すると、33周目の1コーナーで大きな接触事故が発生。#38 阪口晴南 (VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)のクルマにトラブルが発生し、電気系がシャットダウン。突然の失速に後続の山本が追突。2台はコースサイドにクルマを止めることとなった。また、このアクシデントを受け、レースは3回目のセーフティカーがコースイン。再開後には逆転劇を繰り広げるのか否か、レースは最後まで慌ただしい様相を見せた。

38周目、コース上を走るセーフティカーのフラッシュライトが消灯。残り3周での戦いとなったが、またしても坪井が理想的なリスタートを決め、福住に攻撃のチャンスを与えない。また牧野も福住を捕らえるまでには至らない。結果、トップ3は最後まで等間隔での走りを続けてそのままチェッカーを受け、荒れたレースに終止符が打たれた。

第4戦富士での勝利に続き、土曜、日曜の2レースを制した坪井は富士3連勝を達成。大量得点をもってシリーズランキング争いでもトップに立ち、3位チェッカーによってランキングでも2位に浮上した牧野との差を14.5点とした。一方、富士での2レースで厳しい戦いを強いられたのが、野尻。7位に甘んじ、ランキングも3位へと後退している。

 

いよいよ残すところ最終イベントのみとなった今シーズンのスーパーフォーミュラ。戦いの舞台は開幕戦が行われた鈴鹿サーキット。今回同様のワンデーレースフォーマットで2戦を開催するが、短期決戦という難しい戦いで、各チーム、ドライバーはプレッシャーをものともしない強い走りが求められる。見どころの多い白熱のレースとなることだろう。

 

フォトギャラリー

 

(文:島村元子 撮影:中村佳史)