スーパーフォーミュラ 第8・9戦 鈴鹿 レポート&フォトギャラリー

スーパーフォーミュラ 第8・9戦 鈴鹿 レポート&フォトギャラリー

2大会連続のワンデーレース。最終大会鈴鹿の初日は太田格之進の勝利に

11月9日、三重・鈴鹿サーキットにおいて全日本スーパーフォーミュラ選手権の第8戦の予選および決勝レースが行なわれた。そのなかで、シーズン初ポールを手にした#6 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がレースを”支配”するような力強い走りで勝利。待望のシーズン初優勝を遂げた。

ついに最終大会を迎えた2024年のスーパーフォーミュラ。最終大会の舞台となる鈴鹿は、3月上旬に行なわれた開幕戦以来となる。前回の富士大会に続き、今回も土曜、そして日曜日の各日に予選および決勝を行なう”ワンデーレース”として実施される。前大会からおよそ1ヶ月の時間が流れ、季節はすっかり秋本場。装着するタイヤ、そして冷え込む気温に合わせたマシンセッティングが戦いを左右することとあって、まずは金曜日に行なわれた1時間30分間の専有走行でのセットアップに重点が置かれた。

なお、この専有走行でトップタイムを刻んだのは、#64 山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)。レースウィークを前に、フォーミュラレースからの引退を電撃発表、衝撃を受けた関係者やファンも少なくない。セッション後に行なわれた引退会見では、笑顔「トップドライバーとして第一線を退くことにした」と語ったが、過去3度にわたりトップフォーミュラでチャンピオンとなった存在感をしかとアピールするセッションでの走りでもあった。

迎えた土曜日は秋晴れの好天気に恵まれる。午前9時5分、気温15度、路面温度18度のコンディション下で予選がスタート。そのなかでQ1・B組において赤旗中断があり、ここで”泣きを見る”ことになったのがランキング3番手の#16 野尻智紀(TEAM MUGEN)だった。チェッカーラップの最中に赤旗が出て、中断後は3分間でリスタート。各車懸命のアタックでタイムを出したが、野尻はQ2進出可能は6番手には100分の4秒足らず7番手に。まさかのQ1敗退の苦杯をなめた。

一方、ランキングトップの#36 坪井 翔(VANTELIN TEAM TOM’S)はQ1・B組で、また#5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)はQ1・A組でそれぞれトップタイムをマークする力走。Q2でのポールポジション合戦に注目が集まった。ところが、Q2のセッションが終了すると、トップ3はいずれもタイトル争いの権利を逸した選手が占めるという結果に。チェッカーフラッグが振られるなか、各車続々とベストタイムを更新するなど、激しいポジション争いを繰り広げたが、最後の最後にチェッカーを受けた太田が、自身初スーパーフォーミュラでのポールポジションを獲得。0.241秒差で#15 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)が続き、3番手はシーズン初のトップ3入りを果たした#65 佐藤 蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)となった。

なお、ランキングトップ3では、坪井が5番手、牧野が4番手と”僅差”から決戦を迎えるが、野尻は14番手からのスタートに。タイヤ交換が必要となるレースフォーマットだが、この戦いの結果次第でタイトル争いが大きく動く可能性もあるだけに、決勝の行方がいっそう気になる予選結果になったといえる。

 

予選終了から4時間半。青空広がるなか、31周の戦いの幕が上がる。気温24度、路面温度32度のなか、ポールシッターの太田がクリアスタートを決めた一方、隣の岩佐は痛恨のエンジンストール。ギアが入らないトラブルで一気に後退した。これで労せずして佐藤、牧野がポジションを上げて周回を重ねていく。なかでも牧野はタイトル争いで少しでも坪井とのポイントを縮めるべく、早速佐藤を攻略しようとオーバーテイクシステム(OTS)を使って攻め立てるが、逆転には至らず。加えて背後に迫る坪井の存在を感じながら、周回を重ねることになった。一方、後方スタートを強いられた野尻。同じくOTSを多用し、逆転を続けて6周終了時にはスプーンカーブで前方車両を攻略。9番手までジャンプアップを果たした。

10周を過ぎてピットインが可能となるなか、アンダーカットを狙ってか、牧野が真っ先にピットへ。これに野尻を含む後続の4台も続いた。さらにその翌周には5台が動く。佐藤を先頭に、坪井もピットインするが、佐藤がピットを離れてコースへと向かうなか、左リヤタイヤが外れるハプニングが発生。思いもしない形で戦列を離れてしまう。逆に坪井は最速の作業を終えてピットを離れると、牧野より前でコースへと復帰。事実上、太田に次ぐ2位で周回を重ねる形となった。

大半のクルマがピット作業を終えるなか、18周終わりにピットインした#19 平良 響(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)にトラブルが発生。佐藤同様、右リヤタイヤと位置こそ違えどタイヤが外れてしまい、ピットロード出口にストップ。ただ、外れたタイヤがスピードに乗って2コーナーまで転がるハプニングとなる。これを受け、コース上にはセーフティカー(SC)カーが導入され、太田が築き上げたマージンが水泡に帰す。その後、22周終わりでレースは再開。上位陣のポジションは変わらずにレース終盤に向かっていたが、一方で、中団で鍔迫り合いをしていた2台がスプーンカーブ接触。うち一台がコースサイドに停車したため、間髪容れずに2度目のSC導入となった。

またしてもトップ快走に水を差された太田だったが、28周終了時のリスタートも完璧に決めてトップを死守。今シーズンすでに3勝を挙げている坪井からのプレッシャーを跳ね除け、再び2位以下の差を広げにかかる。結果、このまま太田が逃げ切り勝利を果たし、待望のシーズン初優勝を遂げることとなった。2位には坪井が続き、さらにポイントを計上。坪井を追い立てるも逆転に至らず3位で戦いを終えた牧野に対し、点差をこれまでの14点から18.5点へと広げることに成功している。

一方、表彰台を目指そうと奮闘を続けた野尻。終盤はOTSも使い切っての激走だったが、終盤の130Rでさらに1台をかわして5位チェッカーを果たす意地を見せた。点差から、惜しくもこのレースをもってタイトル争いからは脱落となったが、観客を沸かせるパフォーマンスを披露している。

最終戦となる第9戦はJAFグランプリのタイトルがかかった一戦。チャピオン争いはもちろんのこと、シーズン集大成をかけての再びワンデーレースフォーマットとして行なわれる。

 

最終決戦のJAF鈴鹿GP、太田格之進が鈴鹿を連勝!

11月10日、三重・鈴鹿サーキットで全日本スーパーフォーミュラ選手権第9戦の予選および決勝レースが行なわれた。シーズン最後の鈴鹿大会は、JAF鈴鹿グランプリのタイトルがかかった戦いとなったが、日曜日のレースで予選2位からスタートした#6 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が前日に続き勝利した。また、2位チェッカーを受けた#36 坪井 翔(VANTELIN TEAM TOM’S)が念願のシリーズタイトルを手にしている。

今シーズンのラストレースを迎えた鈴鹿。前日ほどの日差しはなく、どんよりとした薄曇りの朝となる。午前9時15分からはQ1・A組の予選がスタートしたが、前日とは異なり、全セッション赤旗が出ることなくスムーズに執り行われた。そんななか、前日はQ1・B組に出走し、セッション大詰めの真っ只中に出た赤旗の影響を受け、存分なアタックができずにQ2進出を逃し、予選14番手に甘んじた#16 野尻智紀(TEAM MUGEN)だったが、この日は理想的なアタックを進めこととなった。

いよいよ最終決戦のポールポジションを確定するQ2。大きくライバルのタイムを上回ってのアタックラップを見せた野尻は、一番時計となる1分36秒542をマーク。その後、続々と上位ランカーがチェッカーを受けるなか、坪井が野尻に0.302秒及ばず2番手に。だが、最後に前戦のウィナーである太田がふたりに割って入る形で2番手を獲得した。逆に、ランキング争いで2番手につける#5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)はQ1・A組を2番手通過するも、Q2ではタイムを伸ばせず。仮に坪井が予選2番手となっていればこの時点で大逆転どころか、このまま坪井のチャンピオンが決定するという場面だったが、坪井が予選3番手に留まったことで、牧野は10番手から起死回生を図るチャンスを得た。

 

午後2時30分、薄曇りのなかで31周にわたる戦いの火蓋が切って落とされる。ホールショットを決めたのは、予選2番手の太田。何が何でも真っ先に1コーナーへ飛び込むとばかり、太田が渾身の走りを見せたが、逆に野尻はやや遅れをとり、さらには2周目の1コーナーで後続の坪井にも逆転を許す。その後はシケインで5位スタートの#8 福住仁嶺(Kids com Team KCMG)にも先行されると、6周目には#65 佐藤 蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)が攻め立ててポジションが入れ替わり、5番手で周回を重ねる展開を強いられた。

トップの太田が着々と後続を引き離す走りを見せる一方、坪井は思うように差を詰めることができない。こうなると、10周終了以降のピット作業がレース展開のカギになるとばかり、3番手を走る福住が真っ先にピットイン。同じ周に8台、そして翌周にはポジションアップを狙う坪井や牧野ら、計7台がピットに舞い戻った。一方、太田はその動きを把握したかのように、12周を終えてピットへ。リードを築いたままでのコース復帰を果たしたが、先にコース復帰し、タイヤがしっかりと温まった状態の坪井が背後に迫る。だが、勢いに乗る太田はこれを凌ぎに凌ぎ、しっかりシャットアウト。迫りくる坪井に逆転を許さない気迫の走りを見せた。

レースは21周終了をもって全車がピット作業を完了、終盤へ向かう。タイヤ交換直後の坪井とのバトルを制した太田は、その後さらに勢いをつけ、さらに後続を引き離しにかかる。一方、坪井はタイトル争いでの直近のライバルである牧野、さらに野尻が後方にいることで、もはやポジションキープが万全という走りに。結果、このまま太田が前日の第8戦に続く連勝を達成することで、決着がついた。2位坪井に続き、3位でチェッカーを受けたのは福住。今シーズンはメーカー、チーム移籍を果たし、序盤は勝てるレースを直前で落とすなど”泣いた”戦いもあったが、徐々に結果を残すパフォーマンスを見せ、今回シーズン3度目の表彰台を手にしている。

なお、シリーズタイトルは坪井が文句なしでチャンピオンに。SUPER GTでは2度戴冠してはいたが、トップフォーミュラでは自身初。「しばらくはチャンピオン獲得の余韻に浸りたい」と会見で笑いを誘った。2位には最後の最後まで粘りある戦いを見せた野尻。ポールポジション獲得で得た3点を最大限活かし、3位となった牧野とはわずか1点差という結果だった。そしてこの鈴鹿大会の2戦で合計45点という大量得点を手にした太田がランキング4位に。5位には#15 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)が続き、ルーキー・オブ・ザ・イヤーも手にしている。

 

フォトギャラリー

 

(文:島村元子 撮影:中村佳史)