シーズン開幕戦は2レースで開催。初戦は太田格之進が勝利!
3月8日、三重・鈴鹿サーキットにおいて全日本スーパーフォーミュラ選手権第1戦の予選および決勝が行なわれ、予選3番手スタートのNo.6 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がセーフティカー開けの接戦をモノにし、初戦の勝者となった。
昨シーズンの最終戦から4ヶ月。初戦の鈴鹿は、まだ真冬の寒さが残るなかで走行が始まった。2レース制、つまりワンデーレースでの実施となることから、前日の金曜日には2回のフリー走行の時間が設けられた。なお、今シーズンは13チーム、全22台がタイトル争いにしのぎを削る。
ほぼ無風ながら低温のコンディションとなるなか、予選は午前9時50分にスタート。Q1ではA、Bの2組に分けて各11台が出走する。A組にはルーキー4台を含む11台が出走。トップタイムを刻んだNo.15 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)に続いてルーキーのひとりであるNo.65 イゴール・オオムラ・フラガ(PONOS NAKAJIMA RACING)が2番手につけ、存在感をアピール。一方のB組では、ベテランNo.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)、昨シーズンの最終戦を勝利した太田、そして前日のフリー走行でトップタイムをマークしていたNo.64 佐藤 蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)に続き、ルーキーのNo.50 小出 峻(San-Ei Gen with B-Max)が4番手に滑り込み、Q2進出を果たして見せた。
12台によるポールポジション争いとなるQ2では、いまだ路面温度が低いこともあり、大半の選手が早々にコースインしてタイヤを温める。そのなかでMUGEN勢の野尻と岩佐が各々セクタータイムで最速タイムを奪い合う熾烈なアタック合戦へ。結果、野尻が岩佐を0.022秒という僅差で封じ込め、自身20回目、現役選手最多となるポールポジションを獲得した。岩佐に続き、3番手には太田とホンダエンジンユーザーがトップ3を独占。一方、ルーキートップは小出。7番手からSFデビューレースを迎えることとなった。
予選終了からおよそ4時間強。朝から続く薄曇りのなかで今シーズン最初の戦いがいよいよ幕を開ける。
なお、これに先立ち午後1時45分からのスタート進行中、15分間のレコノサンスラップが始まったが、終盤にフラガがヘアピンでコースアウト。自力でクルマを戻すことができなかったため、レースはピットスタートに甘んじる。結果、ダミーグリッドには21台が整列し、午後2時45分、27周にわたる戦いが始まった。
ポールの野尻よりも早い動きを見せたのが岩佐。ホールショットを奪い取り、野尻は後塵を拝する。3番手は太田が死守し、背後のNo. 5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)とも激しいバトルを見せることになった。一方、後方では、No.12 三宅淳詞(ThreeBond Racing)がデグナーで飛び出し、クラッシュ。セーフティカー(SC)が導入される。また、ルーキートップのグリッドを手に入れた小出だったが、スタート直前にギアトラブルに見舞われ、大きく順位を落とすこととなった。
レースは4周終わりでリスタート。オーバーテイクシステム(OTS)を使っての逆転劇があちこちで展開されたが、トップ3は変わらず。そのままレース中盤に向かったが、8周目のS字で接近戦を繰り広げていたNo.28 小高一斗(KDDI TGMGP TGR-DC)とNo.39 大湯都史樹(SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)による接触が発生し、2回目のSC導入を招いただけでなく、その2台が戦列を離れた。一向に落ち着かない展開が続くなか、レースはピットイン可能となる10周目を迎えると、コース上の全車が一斉にピットへ。2台を擁するチームではピットに帰還した順でのタイヤ交換となるため、自ずとタイヤ交換でのタイムロスは否めず。結果、”割を食らった”ドライバーたちはポジションダウンする羽目に。コース復帰後は、岩佐をトップに、太田、坪井、坪井、佐藤がTOP5を形成。上位陣では野尻が8番手、ピットでのエンジンストールにも見舞われた牧野は15番手からの追い上げを強いられる。
冷えたタイヤでコースに復帰した各車は大きくウェービングしながらリスタートでの逆転を虎視眈々を狙う。そのなかでもOTSをうまく味方につけたのが、佐藤と太田。12周終わりでレース再開となると、1コーナーで”大外刈り”を披露した佐藤が坪井を逆転して3位に、そして太田も、14周目に入ったばかりの1コーナーでOTSが使えない岩佐をダイナミックにアウト側から抜き去り、トップの座を掴み取る。一方、この後方ではシケインで2台が絡むアクシデントが発生。うち、No. 8 福住仁嶺(Kids com Team KCMG)が戦線離脱となり、レース中3度目となるSCがコースへ向かった。
レースリスタートは17周終わり。残り10周の間に大きな変化は見られないものの、太田と岩佐のトップ争いは緊迫の状態。0.5秒を切る僅差のバトルとなり、互いにOTSを使っての攻防を繰り広げる様子は、まさに”神経戦”。ひと足先にOTSを使い切ったトップ太田に対し、岩佐が最後のOTSで攻め立てたが、惜しくも逆転には至らず。辛くも太田が逃げ切って初戦のウィナーとなった。昨シーズンの最終大会の2レースを制している太田としては、鈴鹿3連勝を遂げることに。また、岩佐に続いて3位となったのは佐藤。22年の第9戦以来、チーム移籍後初となる表彰台をもぎ取っている。
顔ぶれは異なるものの、予選同様にホンダエンジンユーザーがトップ3を独占。ディフェンディングチャンピオンでトヨタエンジンユーザーの坪井は4番手となった。
- 第1戦スタート
- 優勝 #6 太田格之進 [DOCOMO TEAM DANDELION RACING]
- 3位 #64 佐藤蓮 [PONOS NAKAJIMA RACING]
- 3位 #64 佐藤蓮 [PONOS NAKAJIMA RACING]
- 第1戦表彰式
第2戦勝者は牧野任祐。鈴鹿初勝利を達成
前日に続き、鈴鹿サーキットにおいて全日本スーパーフォーミュラ選手権の第2戦が行なわれ、予選5番手からスタートしたNo. 5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がピット戦略と速さを武器に逆転勝利をやってのけた。なお、チームメイトのNo.6 太田格之進が緒戦を制しており、チームは鈴鹿でのダブルウィンを達成している。
前日の薄曇りの一日から一転、時折眩しい日差しが照りつけた鈴鹿だったが、強く冷たい風が吹き、体感的には寒さが先行するコンディションとなった。
Q1・A組予選は午前10時15分から。気温11度、路面温度16度のなかでまず好タイムを刻んだのは、No.15 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)。だが、アタックラップで岩佐を上回ったのが牧野。0.075秒の僅差でA組トップ通過を果たす。一方のB組では、No.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)が最速ラップを刻み、これに0.184秒差で第1戦決勝3位のNo.64 佐藤 蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)が続き、太田が3番手でQ2進出を決めた。
12台がポールポジションを目指してアタックに臨んだQ2。今回はルーキーでただひとり、No.50 小出 峻(San-Ei Gen with B-Max)が出走のチャンスを掴んだ。しかし、アタックともなればキャリア豊富なドライバーが躍進。なかでも揺るぎない速さを見せつけたのが、野尻。1分36秒060のタイムでまたしてもチームメイトの岩佐を2番手に退けてみせた。これで野尻は通算21回目のポールポジションを獲得。新記録更新となった。岩佐に続いたのは太田となり、結果、第1戦と同じ顔ぶれが並んだ。
午後になってさらに冷たい風が強まった鈴鹿。一方で気温はさらに上昇して15度に。路面温度も38度となり、前日とは大きく異なるコンディションで前日よりも4周多い、31周の戦いが幕を開けた。なお、第2戦はピットウインドウが設けられておらず、どのタイミングでピットに滑り込んでくるのか、各車”手の内”がよりわからない状態。どんな駆け引きが見られるのか、互いを意識してのアプローチとなった。
抜群のスタートを見せたのは、岩佐。一方の野尻はやや遅れをとり、またしても先行を許してしまう。これで戦略を変えたのか、オープニングラップを終えてすぐさまピットに飛び込みタイヤ交換を実施。すると、野尻に続いて太田もピットに戻り、合計5台が作業を済ませる。さらに、トップ争いの中では、翌2周終わりに岩佐がピットへとかじを切ったが、逆に牧野、そして坪井はステイアウトを選択した。
ピット作業を終えた”裏のトップ”争いとしては、まず、太田が野尻をサイド・バイ・サイドの末にスプーンカーブで逆転。その勢いのまま、タイヤ交換を終えたばかりの岩佐にも迫まると、太田と岩佐がともにOTSを駆使しての激しい攻防戦へ。ここは岩佐がかろうじて”裏のトップ”を死守したが、14周目のシケインでブレーキング競争になると、たまらず太田がオーバーラン。ショートカットする形で岩佐の前に出た。本来ならば、すぐバックオフするところ、太田はチームとの判断でポジションを戻すことはせず、先行したまま周回を続け、結果的にこれが走路外走行の審議対象となってしまった。
一方、暫定トップの牧野は”裏のトップ”を逆転するための大量マージンを築くべく、2番手の坪井に対しても2秒以上の差をつけて
ハイペースでの周回を重ねると、20周終了時点でピットへ帰還。これを見て、坪井もあとを追う形でタイヤ交換を行なった。今日はミスなく無事にコース復帰を果たした牧野。見事、トップキープのままレースに戻ったが、一方の坪井はさにあらず。ひと足先に太田がメインストレートを通過し、これによって、牧野、太田、坪井のオーダーでレース終盤のトップ争いが再燃する。牧野はまだ温まっていないタイヤを懸命にコントロールしたが、太田はあっという間にその差を詰めて、NIPPOコーナーで鮮やかに逆転。トップの座を奪い取った。しかし、そのわずか2周後、先のシケインの走りに対してペナルティが科せられることとなり、競技結果に5秒加算の判定が下る。さらに、タイヤが発動し始めた牧野が太田に詰め寄り、24周目の130RでOTSを活用して、逆転を決めてみせた。
レース後のタイム加算に影響を受けずに済むだけのマージンを築きたい太田。ハイペースの牧野に喰らいつき、なんとしても2位でチェッカーを受けたいところ。そんななか、28周目の2コーナーで2台が接触、うち1台がS字コーナー手前でクルマを止めてしまう。これでセーフティカーが導入され、逃げ切りを目指していた太田は万事休すの事態に。さらにレースはSCランのまま31周のチェッカーフラッグを迎えることとなり、最終コーナーを過ぎてセーフティカーがピットロードに向かうと、それまで縦一列だった後続の車両もなだれ込むように一斉にフィニッシュラインを通過。これにより、牧野、太田、そして坪井のオーダーでチェッカーを受けたもの、タイム加算を受けて太田は12位の結果に甘んじた。なお、坪井に続いて岩佐が3位を仕留めている。牧野は自身通算3勝目をあげるとともに、鈴鹿での初優勝を達成。パルクフェルメでは、喜びを爆発させていた。
次回のスーパーフォーミュラは舞台を栃木・モビリティリゾートもてぎへと移す。4月19、20日のイベントは、開幕の鈴鹿同様にダブルヘッダーでの開催となる。
- 第2戦スタート
- 優勝 #5 牧野任祐 [DOCOMO TEAM DANDELION RACING]
- 2位 #1 坪井翔 [VANTELIN TEAM TOM’S]
- 3位 #15 岩佐歩夢 [TEAM MUGEN]
- 第2戦表彰式
フォトギャラリー
(文:島村元子 撮影:中村佳史)